その晩、Aさんは仕事関係者数人との懇親会に呼び出された。普段はビールしか飲まないが、この日は北岡氏にビール以外のお酒をちゃんぽんで飲むように勧められ、ひどく泥酔してしまったのだ。
北岡氏が自分を襲おうと…
再び意識が戻った時、Aさんは想像もしない場所にいた。北岡氏が宿泊する中野サンプラザのホテルのベッドの上だったのだ。しかも、洋服を脱がされた格好で、上半身裸だったのだ。下半身はまさぐられた痕跡はあったが、ズボンは脱がされていなかった。傍らで下着姿の北岡氏がいびきをかいて寝ていた。Aさんはその時、北岡氏が自分を襲おうとしたのだと直感した。
「その日、生理用のショーツをつけていたんです。下半身は覗かれたと思いますが、とても性行為ができる状態ではありませんでした。それでレイプは免れたのだと思います。急いで服を着て、部屋を飛び出し、停めていた自転車で自宅に戻りました。自分に起きたことを受け止められず、誰にも言えなくて放心状態でした。屈辱的な気持ちになり、ずっと床に転がって泣き続けました」
時計の針は午前0時を回っていた。Aさんはこの日、誕生日だった。以来、Aさんは楽しみにしていた誕生日が、忌まわしい屈辱的な日となった。家族や友だちと誕生日を過ごしていても、毎年、自分が生まれた日に、加害者の顔を思い出さなければならなくなった。
実は泥酔したAさんには断片的な記憶がある。
それは、北岡氏と愛成会の男性役員に抱きかかえられて、北岡の部屋に連れて行かれる場面だ。部屋のドアが閉まる瞬間、その男性役員がニヤニヤしながら北岡氏に向かって手をふったのだ。これがAさんの最後の記憶だ。
その後も続くセクハラ被害
しかし、本当の恐怖はこの日から始まる。北岡氏がこの出来事を話のネタにするのではないかと、翌日から怯える日々が始まった。予感は的中した。しばらくたったある日、北岡氏から「あの時の君はかわいかった」などのメールが送られてくるようになったのだ。また、同僚や仕事の関係者が集まる親睦会の場で、北岡氏が「Aは良い胸をしているんだよな」など、あの日のことを暗示させるような言動をとるようになってゆく。
そのおぞましい言葉に触れた日から、Aさんは睡眠導入剤を飲まなければ、眠れない日々が始まった。あまりにも屈辱的な仕打ちに、絶対に誰にも言うことができなかった。
その後も、北岡氏からセクハラメールは頻繁に届いた。その数は150通を越える。しかし、2015年、Aさんの仕事ぶりが法人内で評価され愛成会の理事になると直接的なセクハラの回数は減っていったという。
実は北岡氏のターゲットが別の女性になったのだ。それが後に共同提訴するグロー職員のBさんだった。ただし、タクシーに乗ったときにお尻を触るのだけは止まなかった。