誰よりも目立ちたいという欲望
大塚との漫才コンビは中学生になってからも続いていたが、あるとき漫才を披露したあと、クラスメイトから「大塚君と杉本君って面白いねぇ」と言われ、漫才のネタはすべて自分で考えていた高文はその言葉に違和感を覚える。
以来、高文はひとりでできる笑いに興味を示すようになり、身近に起こったエピソードを身振り手振りを交えながら披露する漫談や、ラジオから流れてくる落語や小噺を真似して皆の前で披露した。
「小噺その一! もう、暑いでしょう? 夏なんかねぇ、デパートなんか行ったら混んでねぇ、暑い! 暑い! 言うてるでしょ?……オッサン! このデパート、全然冷房きいたれへんやないかい! ほんだらオッサン怒ってねぇ、後ろから棒でバーン!……オッサン! 暖房(乱暴)すな!」
この小噺は『歌え!MBSヤングタウン』(MBSラジオ)で頭角を現し始めた桂三枝(現・六代桂文枝)のネタだった。
テレビが大好きだった高文は、中学3年生のとき、奈良県文化会館で行われた『仁鶴とあそぼう!』の収録を友人と観覧する。『仁鶴とあそぼう!』は、1969年9月29日から朝日放送で始まった、笑福亭仁鶴が司会を務める人気テレビ番組。放送当日、高文は家族と共に、『仁鶴とあそぼう!』を見ていた。すると、ほんの一瞬、画面右上に観客席に座る高文の姿が映し出された。その瞬間、家族から歓声が上がり、高文は嬉しくて部屋中を走り回った。
この体験を機に、高文の誰よりも目立ちたいという欲望は日に日に増していく。
「アーアーズ」を結成
三笠中学校に入学した高文は、同級生の服部と川崎を誘い、「アーアーズ」というグループを結成する。
グループ名の由来は、社会科の教師である佐伯が、何かを話す前に必ず、「あぁ~、あぁ~」と発する癖を持っていたことから。佐伯の口調を真似して、いつも友人たちを笑わせていた高文は、これがあまりにもウケが良かったため、“佐伯のファンクラブを作ろう”と思い立ち、アーアーズを結成した。
しかし、佐伯のファンクラブというのは名ばかりで、実際のところは、突拍子もないことをしていつも同級生たちを笑わせているグループだった。