【30代男性・Kさんのケース】「かわいそう」な息子と関係を持つ母親 ~障害者と性的虐待~
Kさんは、子どものころから統合失調症を患っていた。
あるときKさんは幻覚や幻聴がひどくなり、母親に連れられてクリニックに来院し、デイケアに通うようになった。面談時などに性的な話題を意図的に女性スタッフに振ることが頻繁にあり、それ以降は男性スタッフが面談をすることになった。
そのなかでよくよく話を聞くと、Kさんは風俗通いをやめられず、消費者金融からも借金を重ねており、性依存症の問題を併発していることが判明。Kさんは母子家庭で、現在治療に専念しているので定期的な収入はない。風俗に行くためのお金は主に母親が支払っているという。
そしてKさんと面接を重ねるたびに、さらに明らかになったことがある。彼は中学時代から母親と性関係を持っていたというのだ。Kさんは、「イヤだったけれど、子どものころからそうされていた」と面接で口にしていた。
実父や義父による娘への性的虐待については裁判なども行われており、徐々にメディアでも報じられるようになってきましたが、母から息子への性的虐待も存在します。
統合失調症を患っていたKさんの場合も、母親からの見えない暴力を受けていました。統合失調症とは、幻覚や妄想、まとまりのない思考や行動、意欲の欠如などの症状を示す精神疾患です。原因はまだはっきりとわかっていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることや、大きなストレスがかかることなどが関係するといわれています。
子を思うが故のケアが虐待になってしまうことも
母親はそのような精神疾患のある息子を熱心にケアし、世話を焼いていました。母親は「こんな病気になったのは私にも責任がある。障害のある子どもは将来、恋愛や結婚もできないのではないか」と息子の将来を悲観して、性処理の相手をしていたのです。
しかし息子を「愛している」とはいえ、良かれと思って性的なケアをしたことが、結果としてKさんの外傷体験となり、その影響で借金をしてまで風俗通いがやめられなくなっているのは明らかです。Kさんは、「風俗で性行為をして、いろいろ話を聞いてもらえると安心する」と言います。
統合失調症を患っていても、自立して、恋愛や結婚をしている人はもちろんいます。人生の早い段階から母親が息子の将来を悲観し、性処理の相手をする行為は性的虐待であり、息子の自立を阻むだけでなく、トラウマを植えつけてしまいます。
これはかなり極端な例かもしれませんが、子どもを愛するがゆえに親が行うケアも、行きすぎると「見えない暴力」に転じてしまうことがよくわかります。