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除染しても「無駄だから」

〈あんな場所に長期間停めっぱなしだったから除染するだろう。どのくらいの時間がかかるか測ろう〉

 鞄にしまってあったデジタル腕時計を取り出し、ストップウォッチで計測した。1本目のタバコを吸い終わらないうちに、そのユニックはIHIの駐車場に到着した。

「なんもしないんですか?」

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「無駄だから」

 もう1台の車両を引き上げにいった班は、正規の除染作業を行っていた。除染は事前予約制になっており、それを無視出来なかったのだ。30分ほど待たされたが、上会社の社員はたいそうご立腹の様子で「なんでいちいち除染してくんのよ!」と、下請け作業員を怒鳴りつけていた。こうした風景は単なる例外……モラルの低い社員がごく少数存在しているだけと勘違いしていたが、1Fの復旧では日常的な慣習だったのだ。

©iStock.com

「除染……やったところでやりきれないってことはあるんです。いま、各地で除染が叫ばれるようになって、保育園とか小学校など、いろんな場所で始まりましたけど、基本的に土壌の除染は表面付近の土を取り除き、汚染されてない土と入れ替える。家なんかは高圧の水で洗う。でも、洗ったあとの水はどうしてるんですか。テレビとかニュースでみるとただ流してるようにしかみえない。だったら今度は土が汚染し、川が汚染し、海が汚染する。完全な除染なんて無理なんです。ゴムなんか絶対除染できない。放射性物質を取り込んで、放射化しちゃうからです。木材なんかもそう。目に見えない穴に入り込んじゃう。それを表に出そうと思ったら、表面を削り取らなきゃいけない。今頃ようやくそれをやり始めた。

 電力はばれたら困ると思ってるのか……半減期を過ぎて、ある程度落ち着いたタイミングでやってるのか分かりません。ほんと、なにをやってんのかな、って言いたいんですけど、(東電からは)それで出してくれと言われる。現実問題として、人や車を出さないと復旧作業が進まない。それは理解もできるけど……。

 マスコミも悪いですよ。線量しか注目しないし、言わない。そういうとこを突っつけば冷静でいられるはずがない。国から規制かかってるんですか? それがマスコミなんですか?」

 最後はこちらが責められる始末だった。逆ギレに近い態度ではあるが、業者たちの葛藤は窺えた。