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『こんなとこで仕事できんのか?』

 みんな黙ってますよ。どう対処したらいいのか現場のノウハウがない。とりあえずピンク色のビニールシートを張ります。なにもないよりマシです」(前出の業者)

 取材を続けるうちに恐怖心が湧いてきた。浮かれ気分を後悔したところで後の祭りだ。

 事故前、1Fでは最大130カウントから180カウントが汚染のリミットだったという。それ以上汚染したものはすべて、敷地内から出せなかったのだ。幅があるのはオートメーション測定器と、手作業での測定との誤差を考慮したためだという。

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「事故が起きてから、これまでの基準が一瞬で変わった。一般人の年間線量限度が1ミリから20ミリに引き上げられそうなことは盛んに報道され大議論になったのに、除染の目安が突然引き上げられたことを、なぜ誰も問題にしないのか。IAEAの定める10万カウント……自分たちからみたらあり得ない数値です。これを受け入れるなら、これまで自分たちが守ってきた基準はなんだったのか……どうしても許容できない。

 長い間原発で働いていた業者にとっては、500カウントだって完全アウトなのに、Jヴィレッジではつい最近まで、1万3000カウントを超えない限り、モノも人も、そのまま出していた。130カウントを基準にすれば100倍です。除染しきれなかった場合、最終的には10万カウントだったから、750倍以上です。そんな車が平気で街を走ってるんです。狂ってます」

 業者たちの訴えが正当なのか、ヒステリックなのか……専門家によっても判断は分かれるだろう。ただ、原発を動かしてきた人間たちにとって、いまの日本が放射能まみれの汚染地帯に見えることは事実である。

ヤクザと原発福島第一潜入記 (文春文庫)

鈴木 智彦

文藝春秋

2014年6月10日 発売