心が痛くなるほど悩みました。でもやはり堕胎はできませんでした。子どもに罪はないのです。空の青さ、森の緑の鮮やかさ、空気のおいしさも知らず抹殺されてしまったらあまりにも不憫です。今になって、子どもたちの可愛い顔、元気な姿の写真を見ると、堕胎しようと考えたことに、胸の苦しさを覚えます。
本当にごめんなさい、私の子ども。ママはあなたを愛しています。あなたがお腹にいたときに、あなたが生まれてこないようにしようとしたこともあったけれど、なんて残酷だったのでしょう。でも、あなたは生まれてきました。そして、私の命より大切な至宝となりました。あなたが生まれないようにしようと考えた自分を、何度も責めました。だからママを許して。そして覚えていてください。世界中で一番あなたたちを愛しているのはママだということを。〉
小さな生命の誕生
〈私は日本の家に戻ったとき、心が沈んだままでした。しかし、私は母親になったのです。
この小さな生命の誕生がすべてを変えてしまったのです。私は人をどう愛すべきか、どのように人を世話するべきかを学び、母親としての大きな苦労と幸福を理解しました。そうです、私は母親になったのです。
私はどうやってこんな可愛い子を産んだのでしょう。子どもの小さな泣き声が私の胸を愛情でいっぱいにします。身をかがめて見ると、この新しい家族の一員、私の息子、彼は眉をひそめ、目をまばたかせ、口を動かし、手を動かし、足を動かしています。それらの、すべてが、この新米の母親に狂うような歓びを与えます。子どもと一緒に息をしているというだけで、甘い蜜を飲んでいるような幸せでした。幸せで叫びたくなり、幸せで踊りたくなりました。どうして、こんなに可愛いのだろう。あまりにも可愛くて、どうやって愛したらいいのかわからなくなるくらいでした。この子は私の中にあったすべてのやさしい感情を引き出してくれたのです。この小さな生命と、私の生命は母と子として、けして引き離されることはないのです。この時から私の心の中に小太陽が生まれました。彼は万物を照らし、万物を生き生きとさせ、万物をさらに色鮮やかにしました。また私にすべてに関しての希望と憧れを持たせてくれ、すべてのものに対して、おおらかで寛容でいられるようにしてくれました。この小さな赤ちゃんが私を母親にしたのです。私を本当の意味での女にしたのです。いままでは陰気くさいと思っていた庭も、いまや全体が光輝いて新しい生命の誕生に歓び、生き生きとしていました。 長男の誕生が私の生命に活気を与えてくれたのです。
それと同時に、1年だけという決意もどこかへ消えてなくなってしまいました。〉