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「正直、堕胎手術も考えましたが…」 中国人“鬼嫁”は、なぜ息子たちを溺愛したのか

『中国人「毒婦」の告白』#8

2020/12/03
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長男誕生とともに心境に変化

 子どもが生まれた後の詩織の変化について近所の人はこう証言する。

「嫁いできたときは、秋子さんそのものが子どもみたいだったが、子どもが生まれてから、なんか心がおだやかになったというか、本物のお嫁さんになったという感じがしたものだ。それに、子どもはそれこそ舐めるように可愛がりましたね」

 茂との間に相性の悪さは依然としてあったようだが、長男誕生とともに徐々に詩織の心境にも変化が現れたかのように傍からは見えていた。

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※写真はイメージ ©️iStock.com

 

 そして、97年春の長男に続いて98年秋に2人目の男の子が誕生する。

 当然、子育てが忙しくなり、何かとイザコザが絶えない夫婦の間も、一見円満にいくかのように見えた。が、やはり、それはつかの間だった。

 詩織は、以前のように、再び金銭的な面と、茂の一方的で獣のような性行動に不満を募らせていったのだ。また前後して鈴木家の財産をめぐっての身内でのトラブルが表面化し、さらに、詩織の親戚だと称する人たちが、詩織を頼って来日していたことも問題を複雑にしていた。

中国一族の来日

「ちょうど長男が生まれたあとぐらいに、中国から秋子ちゃんの親戚だという夫婦者や妹さんなどが来日して、一時鈴木家の近くに住んでいました。それで鈴木家の親戚とかの間では、秋子さんの中国一族に財産から何から全部とられてしまうのではないかと、随分、大騒ぎになったと聞きましたがね。でも、そんなトラブルがあったためか、その人たちは、まもなく帰国し、鈴木家の近くでは見ることがなくなりました」(近所の住人)

 詩織の手記の中でも、こんな話が描かれている。

 詩織一族が来日した折、茂が、彼らの保証人にならないよう親戚筋が激しく迫ったという。もし、彼らが、借金などをし、何かあったら、鈴木家の財産が詩織の一族にすべて収奪されると心配したのだ。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 詩織はそのことに対し「鈴木家のたいしたことない財産など誰も欲しいと思ったことはない。どうして自分がそんなことに巻き込まれるのか」と反発している。

 そして、そうしたトラブルに嫌気がさしたとして、茂に泣きながら、こう迫っている。

「どうして自分が鈴木家の財産をもっていくのか、それに鈴木家の財産というのはどれほどあるのか、あるなら見せて欲しい」

 さらに、こう宣言したと手記には記している。

「私たち別れましょう。私は離婚したい。あなたの家の財産は一切いりません」

 しかし、すぐに離婚できなかった理由は、「長男が生まれたばかりで、さらに、二男がお腹の中にいたことだ」と詩織は記す。また来日していた親戚の人たちが日本で借りた部屋の名義人が茂だったことも大きかったようだ。もし、離婚となれば、茂の態度次第で親戚の人たちが日本で落ち着いて暮らす場所がなくなってしまう。