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連載この鉄道がすごい

さらなる改良で“未来の乗り物”リニア新幹線はどこまで進化したのか

時速500kmを体感して考えたこと

2020/11/29
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もっともっと進化する予感

 各座席の肘掛けに電源用コンセントがついている。ただし家電のほとんどに使われるACコンセントではなく、USBタイプAになっていた。また、テーブルが座席背面から肘掛け格納型のサイドテーブルになった。「出張族がノートPCを使えない」という声があった。

 しかし、品川~名古屋間の約40分で、ノートPCを使わなくちゃいけない作業は考えにくい。メールの確認や簡単な文書作成はスマートホンやタブレットで十分だ。そもそもUSBタイプAでさえ2027年に主流だろうか。このユニットは交換可能になっている。その時代に即したコネクタになるはずだ。そこはJR東海の先見の明といえる。

L0系950番台のテーブルはアームレスト格納式
L0系950番台のコンセントはUSBタイプ。1座席に1口になるため、1人で複数の機器を接続する場合はハブを持参する必要があるが、そこまでの用途は想定していないと思われる

 背面テーブルにしても、ノートPCを開いて作業するヒマさえなさそうな所要時間で必要だろうか。飲み物やスマホを置く程度ならサイドテーブルで十分。ただし、私のようにお腹が大きいとサイドテーブルは困る。出し入れ時も使用時も不具合が多い(笑)。しかしこれは「どちらか」ではなく、両方搭載すれば済む話でもある。

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 壁や天井の素材は新しいけれど、仕上がりは現行の新幹線車両ほどハマっていない。座席の肘掛けや格納式テーブルも指を挟みそうで、まだまだ改良の余地がある。つまり、950番台がリニア中央新幹線の決定版かと言えば、それはちがう。

「正解」に達していないからこそ進化する

 ジェット機の先頭形状はボーイングもエアバスもほぼ同じで、あのかたちが空力など実用面優先の「正解」だと思う。それにくらべて高速鉄道の先頭車形状は常に新型が登場する。なぜなら、いまだに「正解」に達していないからだ。高速鉄道も空力やトンネル微気圧波の解決が最優先だ。その正解を求めて、新型車両は常に新しい形になる。

都留市の山梨県立リニア見学センター「わくわくやまなし館」展望台から 

 現在の最先端が、2027年も最先端であるはずがない。その意味でリニア中央新幹線車両も、他の高速鉄道も未完成だ。正解を求めて技術者、デザイナーは精進しつづける。

 900番台から950番台への進化を体感して、あと7年後のリニア中央新幹線はもっと進化するだろうと確信した。おそらく数年後には新たな試験車が登場し、それが営業先行車になると思う。

写真=杉山淳一

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