しわ寄せを食らう下請け業者
関係者は苦しそうな表情で、「年内の冷温停止宣言が足枷だ」とこぼす。
「ここまで異常な事態なんだから、多少、スピードを犠牲にしても、確実性を重要視したほうがいい。現場ではそうした声も強い。無理して『かろうじて冷温停止の定義に、カスるような状態』に持っていったところで、それが一瞬で終われば意味がないからです。本店には事故収束のグランドデザインがないんでしょうね。そのための費用も底をつきかけていて、とりあえず収束した、という形にしたいんだと思います。実際、あちこちで予算が削られています」
しわ寄せを食らうのは、結局のところ、下請け業者である。
東芝系列が作ったサリーの二期工事―汚染水を除染・濃縮したあとに残る汚泥(スラッジ)の貯蔵施設の建設を受注したのは三菱系列だった。日本を代表するプラントメーカーである三菱系列は、1Fに自前の原子炉を持っておらず、これまでの復旧作業ではサポート的な位置付けだった。三菱系列では作業員の単価が、1日あたり1万円ほど安いという。
「1Fの危険手当……いまはよくても2000~3000円ですね。あれだけ汚染した場所で作業しているのに、もう通常の単価と変わらない」(同前)
1Fは今でも不安定な状態を抜け出してはいない。にもかかわらず周囲はすっかり、いつもの日常に戻りつつある。
線量より汚染が問題
東電関係者や業者たちを取材し、ある事実が見えてきた。
業者たちが繰り返す「線量より汚染が問題」という言葉がキーワードとなった。汚染に注目すれば、福島第二原発……通称2Fの状況は明らかに異様だ。なにかあったとしか思えない。それほど2Fは汚染がひどい。
2Fの原子炉は合計4基、震災と津波によってそのすべてが停止している。冷却に問題はなく、原子炉の温度も安定しているが、復旧作業が行われたのは4号機だけだ。業者の証言を集約し、東電関係者に汚染の事実をぶつけると、急に腰砕けになった。
「……たしかに……まだ定検を開始してないのに、なんでこんなに汚染してるの? と思います。最上階のオペフロ(オペレーションフロア)やコンクリート遮蔽プラグなんて信じられないほど放射能まみれ。……ペデスタルにも水が溜まっている……」
固有名詞が出ているオペフロやコンクリート遮蔽プラグは、原子炉という釜の上の部分に当たる。関係者が口を滑らしたペデスタルは釜の下にあり、原子炉を支える台座である。
東京電力が発表した2Fのプレスリリースに汚染の記述はまったくない。