神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判員裁判が11月26日、結審した。強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)の被告人質問を、被害者遺族たちも傍聴席で聞いていた。
報道記者席や一般傍聴席との間が遮蔽された遺族席が設けられ、涙でかすれる声や怒りの声が漏れ伝わってくる場面もあった。遺族の中には、意見陳述をする人たちもいた。その一部を紹介する。
他人事のように話す白石被告への怒り
まず、最初に殺害されたAさん(当時21、神奈川県)の母親は証言台で話をした。白石被告との間にも遮蔽物があり、声だけを聞いている状態だ。傍聴席からは曇りガラス越しに姿を確認できる程度だった。他人事のように話す白石被告への怒りが伝わってきた。
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あの日から3年の月日が流れました。しかし、私たち家族の中では、時が止まったままです。娘は責任感が強く、思いやりのある子でした。ただ、思春期の頃から、精神的に不安定になり、通院や入退院を繰り返していました。娘なりにバランスを保とうと努力していました。そんな中で、仕事を続けながら、パソコンの資格を取りました。正社員を目指し、5月ごろから準備をしていました。信頼できる人と出会い、生活をすることを望んでいましたが、身勝手な被告人に命を絶たれました。娘が味わった苦しみ、痛みを思うと、引き裂かれる思いで、娘のことを思うと、無念でなりません。
私がもっと娘の話を聞いたり、寄り添っておけばよかったのかとも思います。私たち家族は何一つ心が癒えることはありません。当たり前の日常は取り戻せない。加害者には、憎しみや怒り、悔しさが湧き上がってきます。報道関係者の取材や裁判では、他人事のように話しています。
しかも、報道では、娘の名前、顔、生活の一部が書かれました。マスコミが押しよせてきました。数日間は恐怖で仕方がなかったです。現実がなかなか受け止めきれない思いで、被害者の中に娘がいることが夢であってほしいと思いました。加害者には、同じような苦しみや痛みを味わって欲しい。
死刑が執行されるまで、人権を守られて生活をすると思います。しかし、娘が戻ってくることはありません。21歳という短い人生を、身勝手な犯人に奪われました。強い憤りを抱きました。死刑をもって償ってほしい。
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