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「悪魔の所業」「同じ人間であることが許せない」座間9人殺害、法廷に響いた遺族たちの涙の声

座間9人殺害事件 裁判傍聴レポート

2020/11/28

genre : ニュース, 社会

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「被告人は今でものうのうと生きています」

 同じくCさんの母親も意見を表明した。高尾署で遺体を見た時のショックは言葉にできないほどの悲しみだったという。

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 息子は優しく、繊細でした。ゆえに、悩みを抱えましたが、その都度、家族はサポートしましたし、職場の方も支えてくれました。そのことに早く気がつかせ、救ってあげられればよかったと後悔しています。

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 次男を出産したとき、息子がポケモンを差し出し、「これをあげる」と言ったときのことを思い出します。

 とても可愛かった。それが目に焼き付いています。息子は、私にとって、愛おしい存在です。もうその表情を見ることができないと思うと、心の中が空っぽになりました。

事件発覚を受け、警視庁高尾署には報道陣が集まった

 事件前、息子は病気になりました。入院し、治療を受けていました。入院中の様子を見ていくと、順調に回復していました。入院前と変わらない生活が送れる、日常に戻れると信じていました。

 行方不明になったとき、思いつく限りの場所に行き、探しましたが、8月29日、あの日から息子の姿をみることができなくなりました。事件が発覚し、数日後に高尾署へ行きました。あの姿をみて……(涙声で聞き取れない)……大切な子……(同)……胸が引き裂かれる思いです。

 生きていこうとした息子を騙し、犯人の身勝手な理由のために殺されましたが、どれだけ無念だったことでしょうか。息子の人生はたった20年で終わらされました。しかし、被告人は今でものうのうと生きています。これからつながっていただろう命、人生も奪われました。どれだけ罪深いことなのか。極刑をもって、この世から消えて欲しいです。

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©文藝春秋

証言の最中に白石被告はうなだれた

 ヒモになろうと思ったYさんをカラオケボックスで待たせている最中に、白石被告は、アパートに呼んだDさん(当時19、埼玉県)を殺害している。そのDさんの母も話をした。DNA鑑定で、身元が特定できたのは、Dさんの誕生日だった。

 この証言の最中、白石被告はうなだれた。刑務官に取り囲まれているために、傍聴席から白石被告の様子が見えにくい。凝った肩を動かしたり、深呼吸をしたり、机の上のノートや資料を見たり、だるそうにすることは公判ではよく見かけたが、うなだれる姿を筆者は見たことがなかった。

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 小学校ではクラブ活動や宿泊学習でのキャンプファイヤー係になり、がんばっていました。中学校ではクラス対抗の合唱や委員会活動を頑張っていました。教員になりたいと思ったのもこの頃です。高校受験の面接で、部活をやり直したいと言っていた通り、3年間、演劇部で頑張っていました。

 大学入学後、ともだちと泊まりがけで遊びに行ったこともあります。成人式の準備もしていました。年越しのカウントダウンのイベントも楽しみにしていました。しかし、約束を果たすことなく、19歳9ヶ月でこの世を去りました。

 娘が行方不明になって事件発覚までの数ヶ月、昼夜問わず探し続けました。結局、見つけることはできませんでした。DNA鑑定で娘であると分かっても、すぐには受け止められませんでした。対面できた日は、娘の誕生日でした。変わり果てた姿でした。声をかけたのは、「誕生日、おめでとう」ではなく、「やっとみつけられた」「ずいぶん探したよ」ということでした。どれだけ苦しい思いをしたことでしょう。