9月30日に、東京地裁立川支部で初公判が開かれ、現在も裁判が続いている「座間9人連続殺害事件」。白石隆浩被告が強盗・強制性交殺人罪などに問われている。

 2017年8月からの約2カ月間に、SNSで自殺に関する投稿をした当時15~26歳の男女9人を誘い出して殺害し、自宅で遺体を解体。遺体の大部分は遺棄されていたが、頭部などは自宅のクーラーボックスから発見された。 この世間を震撼させた凶悪事件の加害者である白石被告は一体どんな人物で、如何にして犯行に及んだのか――。

 ノンフィクションライターの小野一光氏は、立川拘置所(東京都立川市)で白石被告と11回にわたって面会し、その対面記録を「週刊実話」(日本ジャーナル出版)に連載している。本記事では同誌2020年10月8日号に掲載された連載第8回から転載する。

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 ※本稿にはショッキングな表現が多出します。ご注意下さい。

法廷での白石被告 ©時事通信社

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「死刑判決を受けて控訴する意味はねえなあ」

「小野さん、これまで会った人のなかで、死刑判決を受けて、控訴しなかった人っていますか?」

 8月19日の8回目の面会が始まって間もなく、白石隆浩が聞いてきた。

「いや、いまのところいないねえ。それに、控訴しないって意思があっても、弁護人が控訴しちゃうことがほとんどだから。そのあとで、本人が控訴を取り下げるって感じだよねえ」

「なんか、控訴する意味はねえなあって思ってて…。(相模原障碍者施設殺傷事件の)植松さんみたいにするかなあ、と思って…」

 植松も一審での死刑判決後、弁護人が控訴したが、本人が控訴期限内に控訴取り消しの手続きを行い、死刑が確定している。

「いやもう、今後、大口の話とかってなさそうじゃないですか。それなら早い方がいいなって…」

 ここで白石の言う「大口の話」とは、現金の差し入れと引き換えにやる面会のこと。私が、「でも、死刑が確定して家族と弁護士以外に会えなくなると、その可能性も失われるよ」と告げると、「たしかに、そうですよねえ…」と、結論を出さぬままこの話題は終わった。