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「帰れ! 帰れ! 中国に帰れ!」 夫殺しの中国人“鬼嫁”が、性感マッサージで働き始めたワケ

『中国人「毒婦」の告白』#10

2020/12/10
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風俗嬢デビュー

〈こうして私は東京の浅草周辺で飛び込みで性サービスのないマッサージ店に勤めました。でも、はじめたばかりの頃は、慣れないせいか、とっても嫌でした。

 最初は40代の男性。裸で、うつぶせになっている見知らぬ男に、どうやってマッサージをすればいいのでしょう。どこから始めたらいいのか、どうしたら喜ぶのか一向に分かりません。心臓がドキドキしていて、開いた手でお客さんの肩を触りました。何か違うみたいです。今度は背中を触ってみましたが、やはり何か変でした。手を腰の上において、ちょっと迷って動かしました。これのどこがマッサージなのでしょう。触っているだけ、圧していません。もし、その時、誰かが私の様子を見ていたら、私が魔法使いか催眠術師に思えたでしょう。どうしたら良いのか本当に分かりませんでした。すると、お客さんが、むっくり起き上がり、あぐらをかいて、私をじっとみました。怒られるのでしょうか。お客さんは、私をジロジロ見た後、こう尋ねてきました。

「新人?」

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「ハイ、なんにもわからないのでゴメンナサイ」

 私は身を固くして謝りました。それにお客さんが全裸だったので、恥ずかしくて顔が真っ赤になりました。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 するとお客さんが、突然笑い出し、こう言ったのです。

「もうマッサージはいいから、ここに座っておしゃべりをしようよ」

「マッサージをしなくても、お客さん怒りませんか?」

「怒らないし、ママさんにも言わないよ」

 私は安心して横に座りました。

「笑顔が可愛いね」

「そんなことありません」

「まだ学生でしょう?」

 私は笑ってその質問には答えませんでした。

 私が二児のママなんて知ったら、きっとひっくりかえるだろうな、などと考え、可笑しくなりました。その後も、多くのお客さんから学生と間違われました。

「日本の食べ物好き?」

「好きです」

「何が好き?」

「お刺身とおすしが一番好きです」

 終了時間になると、会話することもなくなり、ふたりとも黙ってしまいました。そして、最後にお客さんはこういいました。

「君は俺の好みのタイプだ。今度は指名するから。きょうはありがとう」

※写真はイメージ ©️iStock.com

 なんと私は逆にお礼を言われてしまったのです。のちに、このお客さんは本当に指名してくれました。私の風俗体験1日目は、恵まれていて、次のお客さんも最初のお客さんと同じようでした。また別のお客さんは私が新人と知ると逆にマッサージの仕方を教えてくれたりしました。皆、善良ないいお客さんでした。

 こうして私は住み込みで3週間近く風俗の仕事をして30万円余りを稼ぎ、端数のお金を残して30万円を中国にいる息子たちに送金したのでした。そして茂さんの元には、ストレートに中国から帰った振りをして戻ったのです。〉