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「日本の男って簡単よ。一寸、胸や腰を触らせてあげるだけで、大喜びするの」 中国人毒婦は、本当に“夫殺し”を依頼したのか

『中国人「毒婦」の告白』#9

2020/12/10

 2006年、“中国人妻の夫殺人未遂事件”が世間を騒がせた。お見合いツアーを経て結婚した中国人妻の鈴木詩織が、親子ほども年の離れた夫、鈴木茂に、インスリン製剤を大量投与するなどして、植物状態に陥ったのだ。夫の目を盗んで性風俗で働いていたことや、1000万円で整形した等との噂も影響して、センセーショナルな報道が相次いだ。そんな中、事件記者として取材を進めていた、田村建雄氏は、獄中の詩織から300ページに及ぶ手記を託される。取材の様子を『中国人「毒婦」の告白』から抜粋して紹介する。

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子どもの教育のためならどんなことでも

 こんな折りのことだ。高校の校長をしていたことのある詩織の叔父がこう言ったのだ。

「何十年も子供たちを教えてきたが、おまえの長男は優秀だ。こんな優秀な子どもを見たことがない。もし、この子が将来、優秀な人材に育っていかなかったら、それは親の責任だ」

 当然、血族としての身贔屓があったろうし、多少のお世辞も含まれていただろう。しかし、詩織はその言葉を親として、真剣に受け止めた。そして、子どもの教育のためならどんなことでもしようと固い決意をする。

 ともあれ、故郷に滞在した幸せな数週間はまたたく間に過ぎた。

 ところが、帰国直前に二男が風邪をひき、両親に一時預け、長男だけ連れて帰国する。

 詩織が工場勤め以上の金を稼ごうと自ら動き始めたのは、この頃からのことである。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 02年の訪中後、手記にこんな記述が出てくる。

〈オモチャやお菓子などを買ってあげられないときに見せる子どもたちの表情と眼差しが私の心を苦しくしました。ママが無能だから、ママにお金がないから、だからあなたたちの小さな望みをかなえてあげられないの。私は心の中で、いつかママが望みをかなえてあげるわ、といいました。私があなたたちをこの世に連れてきたのだから、ママにはあなたたちを幸せにする責任があるの。いつかあなたたちを必ず満足させてあげるわ。〉

暴力団関係者との不倫

 その手始めとして、詩織は車の免許を取ることにチャレンジする。

 しかし、この行動は、彼女が無意識に求めたかどうかとは別に、彼女に新しい世界をもたらす。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 もともと車が大好きな彼女は、当時、自動車学校で知り合った女性に、ある男性を紹介されるのだが、彼が乗っていたのは、詩織の心を夢中にさせるような高級車だった。詩織は、その車に引き寄せられるように、その男性と食事などを楽しむようになる。まさにその高級車と美味しい食事の世界こそ、詩織が来日前に描いていた世界に近かったのかもしれない。甘い夢のような一時。しかし、その行き着く先は、ご多分にもれず「不倫」だった。その「不倫」の理由を詩織は鳥にたとえ次のように描いている。

〈食事の後、「白雪夫人」(高級車のこと)は私を知らない場所に連れていきました。