一周34.5km――東京のど真ん中を走るJR山手線には、たった1つだけ踏切がある。

 それが、駒込~田端間にある「第二中里踏切」だ。山手線のオンリーワンの踏切として、鉄道ファンは慣れ親しんでいたが、このほどその踏切の廃止が決定されたというニュースが飛び込んできた。

《第二中里、消えちゃうのか~(涙)》

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《ついに廃止決定、来たか。時の流れを感じる》

《なくしてもいいから、モニュメントは残してくれ。警報機とか遮断機とか》

 などなど、ネット上では、鉄道ファンたちの悲しみの声が相次いだ。

「開かずの踏切」として有名だった第二中里踏切 ©️AFLO

 第二中里踏切は、1925(大正14)年に誕生。

 北区中里3丁目に位置し、駒込駅から約400m田端方面へ行くとある。幅員は4.8m、山手線の2つのレールをまたぎ、北側が外回り(田端方面)、南側が内回り(駒込方面)のレールだ。

 都心を走る山手線に唯一あるレアな踏切ということで、鉄道ファンからは人気が高い。ちなみにクイズ番組でも「山手線内にある唯一ある踏切の名前は?」という問題が成立するほどで、鉄道ファン以外にもそれなりに有名な存在だ。

 第二中里踏切を渡ると跨線橋があり、下には並走する山手線貨物の線路が走る。この線路は湘南新宿ラインも使用する。

山手線から第二中里踏切を鑑賞できるポイント

 とはいえ「なくなる前に、第二中里踏切を見に行こう!」と言っても、鉄道ファン以外はピンとこないだろう。ただ、筆者としてはぜひ山手線に乗ったついでに、車内から第二中里踏切を楽しんでいただきたい。

 おすすめは、田端から駒込に向かう内回りからの踏切鑑賞である。このエリアは山手線内でも「あまり行ったことがない」という人も多く、特に田端・駒込の2駅は山手線の中でも存在感が薄い。しかし鉄道ファンからは、“鉄分”が濃く、意外と人気が高いのだ。

©️iStock.com

 田端駅の2番線から内回りに乗車しよう。出発すると、京浜東北線と並走、また進行方向右側には、東北新幹線の姿もあり、華々しいスタートを切る。

 やがて右前方には、車両基地(東京新幹線車両センター)も見えはじめ、鉄道好きにとっては、様々な車両を楽しめるポイントの1つだ。

 急こう配の坂を登ると、ともに走ってきた京浜東北線、東北新幹線に別れを告げ、左方向に大きくカーブする。山手線は駒込に向けて孤高の独走態勢に入るわけだが、かなり急カーブなので立っている方は揺れに注意されたい。筆者のようなカーブ好きからすると、線路が美しく壮大に弧を描く光景に心躍る。実にダイナミックな光景だ。

 このカーブを曲がりきると、いよいよメインディッシュの第二中里踏切が現れる。

 ブラックとイエローの芸術的な遮断機が下り、赤い信号が点滅、山手線の通過を今や遅し、と待っている。通過は一瞬である。見逃しに注意だ。耳をすませば「カンカン」という音もわずかに聞こえる。

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 そして通過時は右側にぜひ注目を。

 第二中里踏切とセットで語られる、巨大なゴルフボールが見える。「Golf ▶ it!」と書かれたこのボールは、ゴルフ用品を扱うライト株式会社の社屋シンボルだ。同社は今年で設立60周年を迎えたそうで、山手線で最も愛すべき沿線風景の1つでもある。