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 こうして踏切を通過した山手線内回りは駒込駅へ入る。桜の名所である六義園の最寄り駅で、発車メロディの「さくらさくら」である。ここまで聞き逃さずに堪能してほしい。以上が筆者流の楽しみ方である。

「第二」があるなら「第一」中里踏切はあったのか?

 さて、第二中里踏切を名乗るわけだから、第一中里踏切はあったのだろうか。

 答えはYES。かつて第二中里踏切から少し駒込方面へ行ったところに、元祖中里踏切といえる第一中里踏切があった。警報機・遮断機がなく規模の小さな踏切で、車の横断は不可。人だけが通れる踏切だったが、危険がゆえに廃止になった。

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 第二中里踏切の完成が大正14年であるから、第一はそれよりも前と推測される。

 また、かつて山手線には目白~池袋間にも踏切があった。その名も「長崎道踏切」。

 池袋を出て目白方面へ、西武池袋線の高架をくぐったあたりに存在した。山手線、湘南新宿ライン、埼京線の3路線をまたぐ大きな踏切で、「開かずの踏切」として有名だったそうだ。長崎道踏切は2005年、歩道橋の完成と共に廃止。こうして第二中里踏切は山手線内オンリーワンの踏切となった。

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 ちなみに旅客線としての山手線の踏切は1つだけだが、貨物線としての山手線の踏切はいくつか現存する。鉄道ファンにも人気の「長者丸踏切」もその1つだ。

 長者丸踏切は、山手線と並走する恵比寿~目黒間に位置する。山手線貨物の線路を使用する湘南新宿ラインや埼京線をはじめ、りんかい線や成田エクスプレスなどの特急、そして昨年JR線と直通した相鉄線車両など、さまざまな列車が見られる。まるで車両ガチャのように、通過待ちをするときは楽しい気持ちになる。

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テクノロジーの変化と「鉄道遺産」

 鉄道ファンのみならず、山手線遺産として、歴史ファンの心をくすぐってきた第二中里踏切。轟音を立てながら横切る山手線が間近に見られて、そのE235系車両の魅力を身近に感じられるスポットがなくなってしまうのはさみしい限りだ。

 地元の人にとっての第二中里踏切は、ピーク時の1時間当たりの遮断時間が40分を超す「開かずの踏切」である。内回りと外回りが入れ代わり立ち代わり通り、ピーク時は最短2分半ごとに通り過ぎるのだから、忙しい。遮断時間が長くなるのも当然なのだ。

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 鉄道ファンはもてはやす踏切だが、地元の人の生活の足かせとなっているのならば、廃止はいたしかたないとも思う。踏切から約200m北東にできる陸橋の完成をもって廃止だという。陸橋が完成するまでには、10年がかかるとのこと。

 山手線の踏切がゼロになれば、JR東が目指す自動運転化へと一歩進む。テクノロジーの進化で、交通機関がより使いやすくなるのはとても嬉しい。

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 しかし、これまで慣れ親しんだものが、次々と失われていくのも、ファンとしてはさみしい限りでもある。