「自分を墓に入れるのは誰か。考えても思いつかなかった」
――連載を考えたきっかけは?
カレー沢 もともと、新しく連載を始めようと編集者と話していました。せっかくだったら自分の興味がある題材のほうがいいだろうなと思って。その頃に一番気になっていた「将来への漠然とした不安」をテーマにしたんです。
――その不安の表れ方が、カレー沢さんにとって孤独死だったんですね。でも、連載開始時は36歳(現在は38歳)と、死を意識するのには早く感じますが?
カレー沢 「まだ早い」と言ってるうちに、「もう遅い」になってしまいます。
死ぬことは決まっているのだから、迫りくる現実から目をそらすのではなく、いつか来るものだと覚悟して行動するのがいいんじゃないでしょうか。それに、時間がたくさんあるうちに考えた方が物事はなんでもうまくいきますよ。
――では、死を意識するのは若いうちから始めた方がいいと?
カレー沢 そうですね。70歳や80歳になってからやろうと思っても、体は動かないしマイナス思考になりがちです。ちょっとずつやっていくことが大切ではないでしょうか。
私は、結婚はしていますが、子どもはできないかなと思っているんです。とすると、「私を病院に連れていったり墓に入れたりするのは誰だろう」と悩みました。順番的には、何事もなければ親が死んで、夫が死んで、自分が最後。誰が看取ってくれるのか、考えても思いつきませんでした。
仕事として連載が決まれば、嫌でも死に向き合って描かなくちゃならない。考えないようにしても仕方がないし、孤独死をテーマにすることで将来を考えられるのであれば、一石二鳥かなと決心しました。
親の老後にお金は出さない。出し過ぎると自分が破産する
――『ひとりでしにたい』の第1巻のあとがきでは、孤独死だけでなく「老後」「終活」「猫は神」もテーマにしていると書かれていました。
カレー沢 孤独死はあくまで結果で、そこに至るまでにいろいろな要素があります。
例えば、仕事ばかりしていて人間関係の構築をおろそかにした方がいるとします。周囲には嫌な態度やマウントばかり取ってしまい、最終的には嫌われて縁が切れてしまう。そして孤独死に至ってしまうんです。
それって、老後をどう生きるか、終活をどう考えるかなどのさまざまなテーマを包括しているように感じませんか。
――確かに、老後の暮らし方が亡くなり方に通じる部分はあるのかも知れません。老後を描いたエピソードでは、第11話の「親の老後に使うお金を、子どもが出すと老後破産する」が印象的です。