幼い頃の記憶では、美しくオシャレな伯母だった。しかし、年を重ね親戚とも疎遠となり、なんと、風呂で湯に浸かり液状になって孤独死した姿で発見されたーー。

 そんな描写から始まる漫画『ひとりでしにたい』(講談社)は、35歳で独身の主人公・鳴海(なるみ)が孤独死を回避しようと奮闘する物語。作者のカレー沢薫さんに、今作に込めた思いを聞いた。(全2回の1回目。後編を読む)

(取材・構成 ゆきどっぐ)

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「孤独死は誰にでも起こり得る出来事」

――『ひとりでしにたい』は孤独死だけでなく、婚活や介護などの社会的なテーマに向き合う作品となりました。

カレー沢 ひとりで死ぬことは誰にでもできるけど、“きれいに”死ぬことはなかなかできません。

 タイトルからは、絶望して死にたがっている話に感じられるかもしれませんが、死に向かう過程に、良い人生を送るという前向きな意味を込めました。

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――孤独死について、ご自身ではどのように捉えていますか?

カレー沢 悲惨な亡くなり方がニュースなどでクローズアップされ、「孤独死は、仕事も家族もない孤立した人が迎える特別な最後だ」とイメージしがちです。けれど調べてみると、仕事があって家族もいる人が孤独死を迎えることがあるのだとわかりました。

 それに、孤独死って苦しまずに亡くなるわけじゃないんです。自宅にいるときに病気で倒れ、意識はあるのに誰にも助けてもらえず、苦しんだ形跡が残っていることも多い。……辛いですが、人間は楽に死ねないということですね。

――賃貸物件の場合は死体の異臭や腐敗などで損害賠償が発生するケースもあるのだとか。

カレー沢 孤独死する方は、「死んだ後のことはどうなってもいい」と思っていることが多く、生前には何をする気力もわかない(セルフネグレクト)期間があるとも言われています。だから、死後処理をする人への迷惑を考える余裕があまりないらしいです。
 
 個人的には「死後、どうなっても文句は言わない」という点に共感はしても、死ぬ前の数年を希望もなく過ごし、苦しんで亡くなるのは不安だなと思います。