「JALのクルーが素晴らしかった」「日本だったから、全員が脱出することができたのだろう」との声も……。今年1月に起きた、羽田空港でJAL機と海上保安庁の航空機が衝突した事故は、海外の航空会社スタッフたちからはどう見えたのか?

 国際線外資系CAでYouTuberとしても活躍する、Ryucrew(リュークルー)さん待望の著書『国際線外資系CAが伝えたい自由へ飛び立つ翼の育て方 当機は“自分らしい生き方”へのノンストップ直行便です』(KADOKAWA)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

今年1月に起きた「JAL機炎上事故」は、海外の航空会社スタッフたちからどう見えたのか? ©getty

◆◆◆

ADVERTISEMENT

炎上したJAL機からの脱出は海外でも高く評価された

 2024年を迎えたばかりの1月2日、羽田空港に着陸したJAL機と、離陸準備をしていた海上保安庁の航空機が衝突し、機体が炎上するという大変な事故が発生しました。海上保安庁の航空機に搭乗していた5名の海保職員の方が亡くなられた、とても痛ましい事故だったのですが、JAL機に搭乗していた379名の乗客・乗員は1名の死者も出すことなく、全員が脱出に成功しました。

 事故のニュースはカナダでも報道されていましたし、SNSでも事故の状況について知ることができました。いずれも、JAL機の乗客・乗員が全員助かったことがとても素晴らしいことだと報じているものが多かったです。

 この事故が発生した後、私が働く航空会社ではしばらくの間、フライト前のブリーフィングでこの事故のことが毎回のように話題に上っていました。一緒に働くパイロットやフライトアテンダントは毎便異なるため、ブリーフィングの顔ぶれも毎回変わるのですが、誰と話していても、結局最後はこの話になっていました。クルーからは「JALのクルーが素晴らしかった」ということ、そして「日本だったから、全員が脱出することができたのだろう」という声が聞かれました。

 もし、私たちが同じ状況に立たされたとしたら、きっと全員が脱出することはできなかっただろう、という話にもなりました。窓の向こうに炎が上がっている状況下でも、日本の乗客の皆さんはクルーの指示を待って行動されていましたが、こちらだったらクルーの指示を聞くことなく、我先に逃げようとする方も少なからずいらっしゃると思います。

 また、緊急脱出時には手荷物を持ち出さないように言われますが、これもおそらくこちらでは守られることがないでしょう。このことは、カナダ人のフライトアテンダント全員が口をそろえていました。

 アメリカの航空会社だったと思うのですが、少し前に、今回ほどの大事故ではなかったものの、緊急脱出に至った事故がありました。そのときの映像も、SNSで拡散されていたのですが、乗客の多くがカバンを手に我先にといった感じで脱出を試みていました。それを知っていたからこそ、今回の対応が称賛された部分もあるのだろうと思います。