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読者の胸の内にも将来への不安があったんだと感じた

――読者からの反応はいかがですか?

カレー沢 Twitterで反響があって、「みんな、将来のことを気にしていたんだな」とわかりました。

 正確なことはわかりませんが、今作の読者は30代から40代の女性が多いのではないでしょうか。私と同じで、介護や老後、死という将来への不安が漠然と胸の内にあるのでしょう。「考えたくないから見ないようにしていたけど、この作品に出会えて良かった」と言われます。老後や孤独死について考えるきっかけになったという意見も多いですね。

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 いままではギャグ漫画の連載がほとんどだったから、「役に立つ」「勉強になる」と言われると新鮮です。

 実際に介護をしている読者もいるし、「経験者として、こういうことがある」とTwitterでつぶやいているのをみて、「そうなんだ」とネタとして拾うこともあります。

©カレー沢薫

――Twitterでは、主人公・鳴海の「実家が太い(裕福)」というエピソードに反応が大きかったですね。

カレー沢 そうでしたね。正直、そこまで読者の心に響くと思っていなかったので、びっくりしました。

 鳴海はお嬢様育ちではありませんが、母親が専業主婦で、大学の進学費用を気にしなくていい環境で育ちました。それこそ作者の私も、奨学金なしで学校に行かせてもらった経験から、どちらかというと実家が太い方なのでしょう。実家が太い側は両親の収入を意識することがあまりないので、人から指摘されて初めて自覚するんですよね。

 今回のエピソードも、蓋を開けてみると実家が細い側から「そうなんだよ! 実家が太いやつらは苦労を知らないんだ」という共感が高かったです。

――実家の収入の違いは学歴格差にもつながりますよね。

カレー沢 家が貧乏だから未来はどうしようもない、とは思いたくありません。

 今は、情報化社会と言われるだけあって、学歴や職がなくても、知識だけで差がつくことが増えてきたように思います。ある意味、情報を知らない人が損をする世の中になっているのではないでしょうか。

――だからこそ、読者に向けて発信されているんですね。

カレー沢 そうですね。助けを求める先を知ってほしいと願っています。

 奨学金だけでなく、老後や介護、孤独死という問題を自分ごととして考えるのはすごく大変です。どこかで「自分は大丈夫だ」と楽観視する気持ちがぬぐい切れない。

 それでも、「自分にも起こり得ること」と考えてもらいたい。何事も当事者意識を持つのが大事なのではないでしょうか。

ひとりでしにたい(1) (モーニング KC)

カレー沢 薫 ,ドネリー美咲

講談社

2020年3月23日 発売

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