制作期間5年 実体験に裏打ちされた奥深い「和」のゲーム
同作は、農業を体験できる「牧場物語」シリーズで知られるマーベラスが発売していますが、企画・開発を手掛けたのは「えーでるわいす」という同人サークルで、制作期間は5年なのだとか。
農業をテーマにしたゲームはいくつも存在しますが、一つの作物を掘り下げるゲームがないことに目をつけたといいます。稲作に関する本、論文に目を通し、バケツで稲を育てられる体験キットを使って、ベランダで育つ過程を一通り観察したことも明かされています。稲が成長する過程で、どの時期にどういうことに気を配らなければいけないか、実際に育ててみることで分かった発見が、ゲームにいかされているのです。
新型コロナウイルス感染拡大の脅威は続いています。外出を控える機会が増えたという人も少なくないでしょう。そんな「いつもの日常」が遠くなってしまったように感じられるいまだからこそ、ゲームで稲作に「萌(燃)え」ながら、米作りを通じて生活している日本という国のことを知るのも、自分の足元を見るように大切なことではないでしょうか。
日本の文化と米は切り離せない関係にあります。相撲や田楽(伝統芸能)、祭りもそうです。近世では「石高」が使われていたように、米は生活の指標でした。我々の先祖が米を特別視し、米作りに熱中した背景には、コツコツ努力する国民性と合致していた側面もあったのかもしれません。
ゲーム単体として面白いのに、ゲームを通じて社会の問題を解決する「シリアスゲーム」的な要素も併せ持っている「天穂のサクナヒメ」。食育にも役立ち、まさに学校の「推薦図書」ともいえるような「和」のゲームなのです。