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バイデン大統領誕生で日本経済への影響は?「得する人・損する人」4つのポイント

2020/12/08

source : 文藝春秋 digital

genre : ニュース, 政治, 経済, 国際, 社会, 企業

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中国に弱腰な日本、今後難しい立場に?

 しかし変わる点もある。自らの交渉力を自負するトランプ大統領は2国間交渉を重視し、多国間交渉は望まなかった。貿易の国際協調機関であるWTOに対しては「中国に肩入れしている」「不公正だ」と批判を繰り返し、加盟国多数が推す次期事務局長の候補者に反対して選出が遅れる事態になっている。

「バイデン氏は国際協調を重視して、トランプ政権で離脱したパリ協定(気候変動抑制に関する国際協定)に就任後すぐに復帰し、WTOを尊重して、日本や欧州など同盟国と連携して中国に圧力をかけるアプローチに変わっていくことが予想されます」(若松氏)

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 今年、中国船が尖閣諸島周辺を航行した日数は300日に達して過去最多となった。

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 日本の世論には、尖閣問題について「中国に弱腰」という批判が常にある。中国の新疆ウイグル自治区への弾圧、香港の自治剥奪など人権問題についても、米国は今年7月、香港の自治権を侵害した人やそれに関わる金融機関に制裁を加える香港自治法を制定した。こうした姿勢に比べ、日本は中国の問題に目をつぶり、経済取引を優先させていると批判される。

 日本企業の中国への進出意欲は旺盛だ。

 ジェトロが日本企業約1万社を対象に行ったアンケート調査では、最も重視する輸出先を「中国」とした回答が前回から大きく増えて28%を占め、2位の米国(15%)、3位のベトナム(8%)を引き離した。理由としては「需要の増加」が9割を占めた(19年3月)。

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「コロナ禍により世界経済が停滞する中で、回復著しい中国市場への日本企業の期待は引き続き大きい」(若松氏)

 斎木昭隆・元外務次官は、「日本の貿易のパートナーとして中国が1番だ。経済関係を切り離すことはできず、決定的な対立をすべきではない。是々非々で臨むべきだ」と述べている(日経電子版・11月9日)。

 バイデン政権が国際協調を進めようとすれば、日本はトランプ政権の時より難しい立場に立たされるかもしれない。

(2)為替

 マーケット関係者や輸出企業の幹部は、バイデン政権で円高が進むことを懸念している。

 日本企業の海外売上高比率は2000年度の29%から年々増加し、18年度は59%に達した。近年は6割の高水準が続いている(ジェトロ世界貿易投資報告 2019年版)。円高が過度に進めば、90年代のクリントン政権時などこれまで繰り返されて来た円高による経済悪化が再来する。