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 トランプ政権下でも1ドル110円台から円高がじわじわと進んできた。

 昨年夏、トヨタ自動車は20年3月期決算の想定為替レートを1ドル110円から106円に見直し、営業利益は1800億円の減益要因となった(8月2日決算より)。今期決算でも、11月6日発表時点で想定為替レートを前期実績109円から106円に見直し、前期に比べて営業利益は2650億円の減益要因となった。

 しかも足元では1ドル104円となり、来年3月の決算に向けて円高がさらに進めば業績は悪化する。

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 東京株式市場は為替に敏感に反応する。日本経済は外需主導型で変わらず、海外投資家は東京市場に対して「円高は売り」「円安は買い」と考え、円高になればほぼ機械的に日経平均が下がる。

貿易の自由化が進めば日本企業に追い風も

 為替に限らず、バイデン氏が掲げた公約の実現については米国上院の存在がある。

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 上院(定数100)の勢力は共和党50、民主党48となった。残る2議席のジョージア州は今回の選挙で決まらず、来年1月に決選投票が行われる。民主党が2議席を獲得して同数になれば、副大統領として上院議長を兼務するカマラ・ハリス氏が票決に加わるため民主党有利となる。ジョージア州は大統領選ではバイデン氏が約1万2000票の僅差で勝ったが(11月20日時点)、もともと共和党の地盤だ。

「バイデン氏は製造業の雇用創出に7000億ドル(73兆5000億円)、環境部門には4年間で2兆ドル(210兆円)など大規模な財政支出を掲げていますが、共和党が上院で過半数を占めれば、大企業への増税や財政支出にはブレーキがかかります。しかし財政支出が減る分は、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和によって補おうとして、国債の買い入れを増やすことも考えられます。財政赤字が拡大するのは確実で、ドルは売られて円が高くなります」(グローバルエコノミストの斉藤満氏)

 円高が重しになる一方、自動車の販売は中国や米国で急回復している。トヨタ自動車の10月の世界販売は前年同月から増えて約85万台に達し、市場の回復を上回って過去最高を更新した。

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「11月15日に、日中韓、アセアン諸国など15カ国がRCEP(アールシップ=東アジア地域包括的経済連携)に署名しました。バイデン政権はRCEPに署名する可能性があり、貿易の自由化が進めば日本企業に追い風となり、円高の悪影響を吸収できるでしょう」(斉藤氏)

 当面の米国経済はバイデン氏が第一に掲げるコロナ対策により左右されるが、その後は政策によって大きく変わる可能性があり、日本経済は無傷ではいられない。続く3つ目のポイント、バイデン政権が重視する「温暖化対策」では日本の自動車産業全体にどのような影響が及ぶのか。4つ目のポイント、株式市場の動向は? この記事の続きは、「文藝春秋 電子版」で公開中です。