両親ともに俳優、自身も子役出身。長女もハリウッド大作に出演する人気女優というロン・ハワード家は、生粋の業界一家だ。しかし、野球帽を好んで被るハワードは、ビバリーヒルズの金持ちよりも、郊外の小さな街に住む普通の人に共感を持つ。今月リリースされた2本の監督作は、その証明。8日にアメリカのナショナルジオグラフィックで放映された「Rebuilding Paradise」は、2018年の山火事で街の大部分を失った北カリフォルニアのパラダイスの住人を、1年かけて追いかけたドキュメンタリー映画。24日にNetflixが全世界公開する「ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-」は、オハイオ州のブルーカラーの家庭に育った男性J. D. ヴァンスの回顧録を映画化するものだ。

Netflix映画『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』独占配信中

「あまりスポットライトを当ててもらえない人たち」へのまなざし

「僕もオクラホマの小さな街の出身。妻はウィスコンシンとルイジアナで育った。僕らには、それらの人々の声、考え方、感じ方、強さ、弱さがわかるんだよ。僕はいつも、理解できる自分だからこそ作れる映画の素材を探している。だから『ヒルビリー・エレジー~』にはすぐ飛びついた。そこへあの山火事が起こり、1年半の間に2本もそういう人たちの映画を撮ることになったわけさ。これらの映画に出てくるのは、普段、あまりスポットライトを当ててもらえない人たち。でも、その人たちが抱える経済的な問題、障害、負のサイクル、特有の文化といったものに、僕らはもっと関心を持つべきだと思う」

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 家族の中で初めて大学を卒業し、イェール大学のロースクールに進学したJ.D.。就職に繋がるかもしれないインターンシップの選考がある大事な日、彼のもとに妹から電話があり、故郷の街に戻ってきて欲しいと頼まれた。長年、違法ドラッグの依存症に悩まされてきた母が、また薬で倒れたというのだ。どうしてもと譲らない妹に押され、J.D.は、ひとり、車を運転し、さまざまな思い出のある故郷に帰る。映画は、現在と過去を行ったり来たりしながら、家族が直面してきた貧困、DV、依存症などの問題に触れていく。J.D.の母を演じるのは、6度のオスカー候補歴を持つエイミー・アダムス。その母、つまりJ.D.の祖母を、アダムスよりひとつ多い7度のオスカー候補歴を誇るグレン・クローズが演じる。