来年1月のバイデン大統領誕生はほぼ確実となった。トランプ政権では法人税減税や財政支出、金融緩和が進み、シェールガス革命の成功やアマゾン、グーグルなどテック企業の成長により、就任前の予想を裏切って米国株式市場は上昇した。バイデン政権になれば一転し、大企業への増税、中国に対する政策の転換、温暖化ガス(CO2)の排出抑制などが進み、日本経済に大きく影響する可能性がある。

ジョー・バイデン氏 ©AFLO

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(1)対中国政策

 トランプ大統領は選挙戦の中でバイデン氏は中国寄りだと批判し、当選すれば「中国がアメリカを支配する」と繰り返し強調した。

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 同時に、ニューヨークポスト紙のスクープにより、バイデン氏と中国の関係が俎上に載った。オバマ政権のバイデン副大統領が訪中した時、次男(弁護士)が同行して中国とパイプを築き、その後、中国企業と組んで米軍事企業を買収し、別の中国企業からは多額の顧問料を受け取っていた。父親の立場を利用して次男が不正に利益を得ていた疑惑であり、トランプ大統領は「犯罪」として特別検察官の任命を指示している。

 バイデン政権になれば対中国融和へ進むという見方もあるが、しかし、中国に対する強硬姿勢は米国の総意だという。

 ジェトロ(日本貿易振興機構)の若松勇・上席主任調査研究員はこう話す。

「中国が成長して01年にWTO(世界貿易機構)に加盟した頃は米国も歓迎していましたが、15年に、中国政府が製造強国入りを目指す『中国製造2025』を発表した頃には、米国は、軍事にせよ技術にせよ、経済にせよ中国を明確に警戒するようになり、今も警戒感は強まっています」

 議会ではトランプ大統領の共和党はもちろん、民主党も時に共和党以上に中国に強硬になってきた。

 今年1月、トランプ大統領は経済・貿易協定の第1段階として、中国が2年間で2000億ドル(21兆円)以上の米国産品を追加購入することで中国政府と合意した。

©iStock.com

「トランプ大統領は安全保障とか人権問題にはそれほど真剣ではなく、貿易赤字のことばかり気にして、大統領選を前にこの合意により世論の支持を得られると考えた印象でした。逆に民主党のリーダー(シューマー上院院内総務)は公開書簡を出し、中国が、その構造的課題を是正する具体的なコミットメントを出さない限り、この合意に断固反対する、と警告したほどでした」(若松氏)

 米国の世論も中国への感情が悪化している。ピューリサーチセンターの世論調査では、「中国を好ましくない」と考える米国民の割合はこの数年増えている。コロナ禍の発生源となり、対策を怠ったという問題が拍車を掛け、今年7月には共和党支持者でその割合が83%、民主党支持者でも68%に上った。

 バイデン政権が誕生しても、議会と世論を無視して対中融和策へ舵を切るのは難しいと見られる。