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自分の方が他人をよく理解していると思い込む

「今考えると大変甘いといいますか、本当に甘く考えていたというか」

 なぜ会見が今になったのかという質問に、彼は『週刊文春』のインタビューを受け、そこですべてを答えて謝罪することで収束すると思っていたと答えた。だが半年自粛していれば復帰の道が見えてくるのでは、という彼の目論見は見事に崩れ去った。

 会見を開かなくても済むのならと思った彼の心情は理解できる。これまで売れっ子として人の気持ちをうまく掴んできただけに、世間やファンの感情を自分で判断してしまい、世間の嫌悪感や反感を掴みきれなかったのだろう。

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 人には他人が自分を理解するよりも、自分の方が他人をよく理解していると思い込む「非対称な洞察の錯覚」という傾向がある。自分の考えや感情の方が合っていると思いがちなのだ。彼も自分の感覚や感情を優先させ、わかっているつもりになっていたのだろう。

©️時事通信社

根拠のない自信「楽観性バイアス」

「正直申しますと、自分は大丈夫じゃないかという思いがあったかもしれません」

『週刊文春』に報じられるまでは、妻である佐々木希さんと他人の不倫報道を見て「そういうことをしたら、こういうことになるのはわかっていたはずなんですけど」と、うつむきながら視線を落とし、時おり目をギュッとつぶって答えた。自分だけは大丈夫だろうという根拠のない自信は、心理学では「楽観性バイアス」と呼ばれる。不倫が暴露された芸能人だけでなく、覚せい剤や大麻取締法違反で逮捕された有名人たちが必ずといっていいほど口にしてきた。彼もこのおかしな信念に支配されていたのだろう。

妻の佐々木希さん ©️時事通信社

「仕事に関しては一生懸命、おごることなくやってたつもりなんですけれども、プライベートでこういうことをしていて、どこかでバレないんじゃないか、という思いは調子にのっていた、天狗になっていた」

 どこかでバレないんじゃないか、というフレーズは楽観性バイアスそのもの。だがその前の「仕事に関しては一生懸命、おごることなくやっていたつもりで、プライベートでこういうことをしてもバレない」という発言の裏に隠されていたのは、当時、彼の内に潜んでいた「モラル・ライセンシング」という心理傾向だったのかもしれない。プライベートで複数の女性とモラルに反する不倫をしていても、「一生懸命仕事をしているのだからいい」、「自分は売れているのだからいい」という自分に対する言い訳、自分を正当化するための免罪符を彼は心の奥に持っていたのではないだろうか。