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アンジャッシュ・渡部の会見は「錯覚」と「バイアス」の連続だった

臨床心理士が、仕草と言葉を分析する

2020/12/06

genre : エンタメ, 芸能

 “本当に”なんともいえない気分にさせられた100分間だった。ぐだぐだ、しどろもどろ、矛盾だらけ。アンジャッシュ・渡部建さんの謝罪会見は、何のために開かれたのかよくわからないまま終わってしまった。

 臨床心理士、経営心理コンサルタントの視点から分析してみる。渡部さんの発言からは、「非対称な洞察の錯覚」や「楽観性バイアス」など、窮地の人が陥りやすい心理状況がうかがえた。人は誰でも自分の持っている錯覚やバイアスに気が付きにくい。ましてすべてが順風満帆であれば、人生このままうまくいくはずと錯覚するものだ。だが錯覚やバイアスによっては、その先に落とし穴が待っていることもある。自己中心的で身勝手な人ほど気を付けなければならないのだが、こういう人ほど気が付かないのも事実だ。

会見するアンジャッシュ・渡部建 ©️時事通信社

「謝罪もなく復帰か」と批判を浴びて

「放送前の番組に関しては、私の口からは何も申し上げられないということです」

 年末特番の収録に参加したと一部で報じられるや、「謝罪もなく復帰か」と批判が殺到した渡部さん。冒頭の謝罪から、言葉を発する度に酸素の足りない池の鯉のように大きく息継ぎをし、瞬きを繰り返す。人は緊張すると横隔膜がせり上がり呼吸が浅くなる。だが口や鼻から息を大きく吸い込もうすればするほど、喉に力が入り、肩が上がってしまって、空気が入ってこなくなる。極度に緊張しているその姿から、売れっ子芸人のオーラは消えていた。

 世間からの風当たりの強さを感じ会見を開いたというが、番組については「私の口からは言えない」「申し訳ない」を連発。レポーターたちの容赦ない追及に、苦悶の表情を浮かべ、時おり目頭を押さえながらも、復帰については白紙と答えた。会見はあくまで謝罪会見と強調したが、多目的トイレなどで複数の女性との不倫が報道されたのは6月のこと。そもそも会見する必要があったのか、準備不足だ、芸人としての力量が見えず残念という声が多く、女性レポーターに取り囲まれ、次々と浴びせられる質問に脂汗をかく姿には同情論も聞こえてきた。

終始おどおどし、まるで別人

 だが驚いたのは、“芸能界のグルメ王”としていつも自信満々、意気揚々、明朗快活、よどみなく流暢で立て板に水のようなしゃべりを見せていた彼の激変ぶり。7~8キロ痩せたという姿だけでなく、終始おどおどとおびえ、周りをうかがう様子が別人だったのだ。不適切な行為が批判されたというだけでなく、その人間性まで否定するような意見やコメントがネットを飛び交っていたのは事実だが、視線を落としたまま質問を聞き、身体をレポーターの方に向け顔を上げても、視線を合わせようとはしない。そもそもなぜ、こんなことになったのだろう。