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「逃げ恥」は“恋愛が苦手な男性”を肯定する ピュアな“ムズキュン”がなぜウケたのか

2021/01/01

“ピュアさの進化・深化”『恋つづ』『わたナギ』も……

 ここからが本題。“ムズキュン”がウケた『逃げ恥』は、昨今のドラマの“ピュアさの進化・深化”を象徴した作品だと考えています。

 特に去年は、『逃げ恥』が放送された「火曜ドラマ」(TBS系・火曜22時枠)はピュア系恋愛ドラマが豊作。上白石萌音さん演じる看護師が、毒舌ばかり吐く超ドSイケメン医師にピュアな恋心をぶつける『恋はつづくよどこまでも』(2020年)。多部未華子さん演じるキャリア女子が、おじさん家政夫さんと心を通わせていく『私の家政夫ナギサさん』(2020年)。この2作が立て続けにヒットしたことは記憶に新しいですよね。

©️共同通信社

90年代ドラマは肉体関係や妊娠などの衝撃展開がウケた

 しかし思い返すと、平均視聴率20%超えの作品がバンバン生み出されていた1990年代の恋愛ドラマは、登場人物たちの心情をシリアスに描写し、ときにドロドロぐちゃぐちゃとした展開がウケていました。

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 20代男女の四角関係を描き、伝説のセリフ「ねぇ、セックスしよう」に度肝を抜かされた『東京ラブストーリー』(フジテレビ系/1991年)。高校教師と生徒の禁断の愛をベースに、レイプや近親相姦という数々の衝撃展開で物議を醸した『高校教師』(TBS系/1993年)。アラサーの女2人・男1人の友情を描くも、そのうちの二人が一夜だけの関係を持ってしまい妊娠が発覚する『29歳のクリスマス』(フジテレビ系/1994年)。

 1990年代はある意味、交際していない男女が肉体関係を結んだり、望まぬ妊娠をしてしまったりというショッキングさが、大ヒットの秘訣だったのかもしれません。

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