「すべてに自分が携わっていないと…」という恐怖感
「クリエイティブ・リンク」でのぼくの役割は「COO(最高執行責任者)」でした。会社のオペレーション部分の担当ですね。お金まわり以外、人事から営業まですべてに携わっていました。
サイトのデザインにもかかわりました。当然デザインを自らやるわけではないですが、デザイナー側と打ち合わせをして、UXやUIを決めていく仕事です。他にもコミュニティの運営や、本の出版、マーケティングまわりもやっていました。
小さな会社ですから、なんでもやるのは当然です。ただ、当時はすべてに自分が携わっていないと気がすまない状態でした。気がすまないというか、恐怖感があったのです。「誰かに任せておくと、成り立たないんじゃないか」という恐怖です。
ぼくがツイッターに入った2014年当時は、まだ会社も小さかったので、その恐怖感は若干残っていました。でもさすがに今は他の人に任せています。フレームワークを大切にして、その中でみんながどのように動いていくかを意識するようになりました。
「史上最強のCOO」になる
「クリエイティブ・リンク」のCEO(最高経営責任者)とCOOだったぼくとで、ビジョンがぶつかったこともありました。
CEOはものすごく発想力が豊かな人でした。「あれもやりたい」「これもやりたい」と、どんどんアイデアが出てくるタイプです。それを「いや、今はこれに集中しましょう」と説得するのが、けっこう大変でした。CEOが風呂敷を広げて夢を語り、COOのぼくが現実に即した形に調整する。理想的なバランスではあったかもしれません。
当時、ぼくは「史上最強のCOOになろう」と思っていました。ビジョンを描くことはぼくも大好きです。好きだからこそ、それがすごくできる人の気持ちもわかると思っています。
ツイッターで言うと、ジャック・ドーシーCEOはものすごくビジョナリーで、プリンシプルを大切にしています。ぼくは彼をすごく尊敬していますし、彼の気持ちもわかっているつもりです。そこをわかった上で、どのように運営していくのか。そういう、まさにCOO的なオペレーションが、ぼくの強みなのかもしれません。
オペレーションをエクセレントに行なうだけでなく、いかにCEOの気持ちや思いを汲み取って、それをオペレーションに落としこんでいくか。そこがCOOの腕の見せ所です。
しかも難しい立場でもあります。ビジョンを持ったCEOと現場を見ている社員たちのあいだに立つわけですから。だからやっぱり起業には「体力」と「精神力」が大切だと強く思います。そういう意味でも運動は本当にオススメです(笑)。
構成=竹村俊助 @tshun423
写真=杉山秀樹/文藝春秋