2014年からツイッタージャパンの代表取締役を務める笹本裕氏。新卒で入社したリクルートでトップ営業マンになったのもつかの間、独立後は一筋縄ではいかない企業経営の難しさに直面。たびたび訪れたピンチを、笹本氏はどう乗り越えてきたのだろうか?
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Q.「眠れない夜」をどうやって乗り越えたんですか?
35歳のときに立ち上げた会社「クリエイティブ・リンク」もピンチはいくつもありました。本当にヤバいときは「3ヵ月か、5ヵ月後ぐらいには倒産するかも」という状況でした。正直、当時のCFO(最高財務責任者)には「もっと早く言ってくれよ」と言いたくなる思いもありましたけどね(笑)。
ピンチに陥ったときは、その後のことを考えると夜も眠れませんでした。体が物理的に硬直してしまうような感覚です。とは言っても、自分たちが動かないとベンチャーは成り立ちません。緊張や恐怖で硬直している場合ではないんです。
ピンチであればあるほど、人には会いたくないものです。部屋に閉じこもって、一人で考え込んでしまいがちになる。ぼくも基本的にそういうタイプです。でも本当はピンチのときほど動くべきなんですね。
ふさぎ込みがちになりそうなとき、自分に言い聞かせてやっていたのは「運動」です。「とにかく走ろう。なにも考えずに走ろう」と。
ある人にこんなことを教えてもらいました。
「運動という漢字は、運を動かすと書く。運動すれば運が動くから、とにかく走れ」と。それ以来、なにかのひとつ覚えみたいに「運が動くから」と言って走るようになりました。
頭をからっぽにするとアイデアが浮かんでくる
ぼくもうまくいっていないときは人に会いたくなくなります。特にうまくいっている人を見ると、いろんなことを考えてしまうからです。
走っていれば、人に会うことはありません。ピンチのときでも「走る」ことだけは継続できたのは、そういう理由からです。それに静かな中で走ると集中してスッキリできるんです。当時は、早朝や夜によく走っていました。
走っていると、頭が空っぽになって、アイデアが思い浮かんできます。すると、自然と元気になってくるんです。アイデアが浮かぶから元気になるのか? 走ったから元気になるのか? どちらかわかりませんし、その両方かもしれません。走り終わったあとデスクに戻って、「このピンチをどう打破するか」と考える。そこで浮かんできたことは、すべて書き記していました。脳に酸素がいくからか、いいアイデアが浮かぶんでしょう。
ちなみに走り始めたきっかけは、兄の存在です。
兄はウルトラマラソンや100キロ走などによく出場していて、すごく走る人でした。ぼくがニューヨーク大学に在籍していたときに、兄はJETROに勤めていてニューヨークに駐在していました。ブクブク太っていく当時のぼくを見て「このままじゃダメだ。とにかく走れ」と言ったんです。そこで一緒に走り始めたのがきっかけでした。