〈自分の意識の変化を実感しました。とても役者冥利に尽きるというか、長いこと役者をやってきましたが、これほど重責を感じることはなかなかありませんでしたね。〉

 三浦春馬さんの誕生日である今年の4月5日に発売された著書『日本製』掲載のインタビューにて、これほどの言葉を彼に語らせた主演作『天外者』が公開された。

三浦春馬さん ©文藝春秋

 三浦さんが演じるのは、五代友厚。幕末から明治初期という激動の時代を駆け抜けながら、薩摩藩士から明治政府の役人となり、実業家に転身して大阪が商都となる基盤を築き上げた実在の人物である。そんな五代友厚の一挙一動が、『日本製』で語っていた俳優としての姿勢とことごとく重なっていたために、観ている間は幾度となく込み上げてきてたまらなくなった。

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三浦さんから監督へ「画のことも考えた」プレゼンテーション

 侍たちに追われて逃げ惑うなか、長州藩士であった伊藤博文とぶつかり、彼が大事にしていた万華鏡を壊してしまう五代。伊藤に責め立てられた彼は、懐からさっと工具入れを取り出してあっという間に万華鏡を修理し、以前よりも美しく輝くように調整までしてしまう。その藍染めの工具入れについて、『天外者』の田中光敏監督は筆者のインタビューに対して、三浦さんの作品に対する並々ならぬ意気込みとともにこう明かした。

「五代友厚が製藍事業に力を入れていたのを調べていて、工具入れには藍染めのものを使いたいって提案してくれたんです。『監督、藍染めを出したいのですが』と僕に訊ねてきたので、『五代は藍染めの事業を大切にしていたから、いいかもね』と答えたんです。

 

 そうしたら、五代とゆかりのある藍染めのアーティストの方と打ち合わせをしてハンカチをいくつか用意して、『これだと血が付いてしまうシーンでは目立たないですかね』とか『これだと入れる工具が映えますね』とか、画のこともきちんと考えたうえで僕にプレゼンテーションしてくれるんですよ。これは本当にありがたかったし、想いが伝わるというか。彼は主演として自分の役をまっとうしようとしているんだなと、その覚悟みたいなものが節々に見えましたね」