三浦さんの言葉「刀を振る背景には侍の魂というものが存在します」
序盤と中盤に立ち回りが用意されており、前者では狭い路地裏で抜刀することなく柄頭(つかがしら)、鍔(つば)を使った“当て身”“鍔打ち”で複数の相手を打ち倒す。後者では、イギリス軍艦内で兵士の刀帯(とうたい)から軍刀を抜き去って司令官の首に刃を当てる。こちらも狭い場所なうえに暗いというシチュエーションにもかかわらず、目にも留まらぬ速さで一連の動作をやってのける。凄まじい殺陣を繰り出す一方で、流麗な刀の扱いと毅然とした佇まいでも魅せてくれる。このふたつの立ち回りには、三浦さんの殺陣に対する真摯な想いが注ぎ込まれていると感じた。
〈武士道という言葉があるように、刀を振る背景には侍の魂というものが存在します。その、どんなふうに刀を扱ってきたかといった背景が今は見えづらくなっているので、師匠には見せるアクションの殺陣を教わりながらも、なぜ刀をこのように扱うのか、なぜこの部位にこういう名前が付いているのかといったことを、稽古を重ねながら少しずつ少しずつ教えてもらっています。〉(『日本製』)
「海外に行きたいです」「こういう役をやりたいんですよね」
しかし、なにより胸を打たれたのは、五代友厚が三浦春馬さんに、三浦春馬さんが五代友厚にしか見えなかったことだ。商業立国することで日本という国を強くしようと、率先して英語を学び、ヨーロッパに飛んで知見を広めていった五代。太平洋戦争下のアメリカに生きる日系アメリカ人一家の姿を描いた作品『アリージャンス』でブロードウェイの舞台に立ちたいという大きな夢を抱いていた三浦さん。視線の先を海外に向けていたのは、どちらも同じだ。
〈最近はもうどんどん「海外に行きたいです」とか「こういう役をやりたいんですよね」とかって言ってしまってます。そういう中で実現することもあれば、実現せずに終わることもあると思いますが、やりたいことがあって、それがさらに具体性を帯びているって、モチベーションにこそなってもマイナスなことは何ひとつないと思うから。あとは目標に到達するために自分が力をつければいい、そんな気持ちでいるんです。〉(『日本製』)