『ドカベン』などの野球マンガで知られる漫画家の水島新司さんが、引退を発表した。
人気作のタイトルである『ドカベン』は、ずんぐりむっくり体形で明訓高校の4番捕手を務めた主人公・山田太郎の愛称だ。この作品の登場以降は、実際の高校野球などで山田と似た体型の選手に“ドカベン”の愛称がつくなど、リアルの世界にも影響を与えた。
さて、そんな『ドカベン』の魅力のひとつに、作中のキャラクターが繰り出す“必殺技”とでもいうべき特技の数々がある。
明訓のチームメイトである岩鬼正美の「悪球打ち」や殿馬一人の「秘打シリーズ」にはじまり、対戦相手でも坂田三吉の「通天閣打法」や、不知火守の「ハエ止まり」など様々に魅力的な一撃が作中を賑わしてくれる。
中でも山田の相棒、里中智が投げる魔球“スカイフォーク”は当時からファンの間での人気も高かった。
スカイフォークはアンダースローの里中が投げる“浮き上がる”フォークボールのことだ。
サブマリンらしく地面ギリギリでボールをリリースし、下手投げの特性を活かして一度高く浮き上がった球が急激に打者の手元で落ちる。手首が極端に柔らかい里中の特長を生かしたボール、というのが作中での説明だ。ちなみに最初にそのボールの餌食となったのは、巨人時代の松井秀喜である。
里中自身の人気もあったとはいえ、打者がボールに当てることもできない「消える魔球」というのは、なかなか夢があるのはよくわかる。
7年前のスポニチによる『スカイフォーク完成間近』の報
ただ、そうはいっても所詮は漫画の中のお話でしょう――と思っていたら、いまから7年前のスポーツニッポンにビックリする見出しがでたのである。
『俊介 スカイフォークついに完成間近 稲葉封じへ足かけ10年』
俊介とは日本が誇ったサブマリン・渡辺俊介(現かずさマジック監督)のこと。当時はロッテに所属し、プロ13年目に入ったところだった。苦手にしていた元日ハムの稲葉篤紀への対策のため、“魔球”を完成間近な段階まで進化させたというのだが…。
スポニチによれば渡辺が当時、目指したのは厳密にはフォークではなくチェンジアップだったそうだが、その軌道は『ドカベン』のスカイフォークと酷似していたという。