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「もともとは高津(臣吾・元ヤクルト)さんや潮崎(哲也・元西武)さんみたいな空振りを獲れるシンカーを目指したんですけど、それにはサイドスローにしないとダメで。サイドからだと角度があるんですけど、アンダーだと同じようには落とせない。それで、『スカイフォークみたいなボールが投げたい』ということだったと思います」

リアル版スカイフォーク(未完成)の握り ©文藝春秋

 残念ながら、結局上述のような理由でスカイフォークの実現とはならなかったのだそうだ。

「たしかマリンスタジアムで風速20mくらいの時に、フォークのにぎりで上手く投げれば可能じゃないかという話は当時コーチとしましたね。マンガほど大きくは浮き上がらないにしても、シンカーが大きく変化することはあるんですよ。マリンは風が正面に跳ね返ってくるので、変化球の曲りが大きくなるんです。それを利用すれば…でも、そんな風速だとだいたい試合中止になるはずなんで、やっぱり無理ですね(笑)」

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スカイフォークの代わりに見つけた必勝パターン

 ただし、スカイフォークを追いかける中で、渡辺は自身の必勝パターンも見つけたと言っていた。

「結局、打者が空振りするのはイメージと実際の動きがズレるから。バッターは『遅いボールは曲がる』と思っているので、あえて曲げないカーブをアウトサイドに投げる。曲がると思って打ちにくると、内に入ってこないので空振りしてくれるんです。僕がスカイフォークをめざした結果、見つけた左打者から三振がとれる必勝パターンはこれでしたね」

 結果的にスカイフォークという球種は、プロが10年以上かけて追い求めても手に入らない“魔球”ではあった。

 それでも、実際のプロ野球選手をして、「もしかしたら実際にできるかも?」と思わせる絶妙なリアルさがあったところもまた、『ドカベン』が愛された理由のひとつだったのかもしれない。

水島新司氏 ©JMPA