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国籍不明の潜水艇が与那国島に漂着… 陸上自衛隊“特殊作戦群”秘密のベールの内幕

元陸将による軍事シミュレーション小説 『オペレーション雷撃』著者インタビュー #1

2020/12/18

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 読書, 社会, 国際

特殊部隊がないのは陸上防衛の上で大きな問題

――創設時のエピソードなどを教えてください。

山下 守秘義務がありますから、話せることと、話せないことがあるのですが(笑)。

  初代群長は一期後輩で、若いときからよく知っていました。彼は自ら指揮官を希望したので、米軍の特殊部隊員養成学校に留学してもらいました。勇猛でたいへん優秀ですが、上司にハッキリと意見をいうタイプの男でした。しかし、一から組織を作り上げるのにはそういう行動力のある人間が必要なのです。

  先にお話しした通り、現代の戦争では正規軍と特殊部隊の両方が使われますが、それまで陸上自衛隊には特殊部隊がなかった。これは陸上防衛を考える上で大きな問題です。なぜかというと、陸上防衛力に欠落機能があるということ。相手の特殊作戦機能に対応する同じ機能が我が国にないということです。ではなぜなかったのかというと、こういう組織を作ると国民が疑念というか、猜疑心を抱くのではないかという危惧がずっと政治レベルであったからだと思うのです。

陸上自衛隊第1空挺団の降下訓練始め「降下はじめ」に参加した、在日米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の隊員。(写真=沼田理)

秘密のベールに包まれている特殊作戦群

――旧日本陸軍のように独断専行してしまうかもしれないという危惧ですね。

山下 しかし先の戦争が終わってから、これだけの時間が経って、自衛隊に対する国民の確かな信頼を諸先輩方が勝ち取ってこられた。もう、そういう心配はないだろうと、大多数の国民に納得していただいた。「特殊作戦群」の構想自体はずっと昔からあったのです。

 しかし、やっと実現することができた。

 以前は演習等で、各部隊のレンジャー資格者を集めてその都度、遊撃部隊として編成していました。でもそういったパートタイム的な寄せ集めではダメだということになった。

 今はそういう時代じゃない。高度な武器の取り扱いはもちろん、緻密な計算力や語学力、通信、衛生に関する専門知識等、高いスキルレベルを要求されるので、特殊教育が必要だという意見が強まった。そこで特殊作戦群編成の具体的検討が始まったわけです。時期は平成10年(1998年)くらいだったと思います。

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――そうして発足した特殊作戦群ですが、現在でも秘密のベールに包まれています。一般に公開される場合も、群長以外の隊員は顔を隠し、書類上でも経歴を追跡できなくなっているようですね。

山下 特殊作戦群は対テロ部隊の枠組内でもありますから、隊員の素性が知られるわけにはいかないのです。隊員個人のみならず家族が標的にされる恐れも大いにあるので、身分を隠させているということです。諸外国の特殊部隊なども同じだと思います。