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国籍不明の潜水艇が与那国島に漂着… 陸上自衛隊“特殊作戦群”秘密のベールの内幕

元陸将による軍事シミュレーション小説 『オペレーション雷撃』著者インタビュー #1

2020/12/18

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 読書, 社会, 国際

note

他の特殊部隊との違い

――海上自衛隊や海上保安庁、そして各地の警察でも特殊部隊が作られていますが、陸上自衛隊の特殊作戦群はどう違うのですか?

山下 ひとくちに特殊部隊といっても、任務によって必要とされるスキルがまったく違います。それぞれの部隊は、任務内容に合わせて作られています。たとえば海上自衛隊の特警隊(特別警備隊)は、不審船に乗り移って武装解除するのが主任務で編成されました。これについては非常に高いスキルを持っていると考えますが、陸上自衛隊の特殊作戦群のような訓練はしていないと思います。保有装備も大きく違います。

 特殊作戦群はさまざまな任務をこなすことができます。『オペレーション雷撃』の物語中では、航空攻撃の誘導を水陸機動団(島嶼作戦用に設立された日本版海兵隊とも呼ばれる部隊)の火力支援中隊にやってもらいましたが、同じことは特殊作戦群でも可能だと思います。ただ、それでは特殊作戦群だけしか出てこないので、水陸機動団を登場させたというわけです。

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『オペレーション雷撃』に登場する、潜航したまま極秘に特殊部隊を輸送するための米海軍のプラットフォームであるSEAL輸送システム改。ヴァージニア原子力潜水艦の艦上部に繋止し、作戦地域近くまで輸送後、海中から潜水発進する。(画 吉原幹也)

『オペレーション雷撃』作中では4個中隊に

――特殊作戦群の現在の編成について、おっしゃれる範囲で教えてください。

山下 特殊作戦群の部隊の詳細は明かせませんが、作品中では4個中隊にしてあります。

 米軍の特殊部隊など他国の部隊と同じように、一般的には地上潜入での作戦、空挺降下しての作戦、水中から潜入しての作戦など陸海空からの任務を遂行できる部隊。そしてそれを統括する本部と教育部隊、という基本編成です。彼らが作戦するときには、バックアップする役割の部隊も必要となるので、この小説のように第1空挺団(陸自のパラシュート部隊)を使ったり、水陸機動団を使ったりしたわけです。これは他の国でも同じで、例えばアメリカのデルタフォースが作戦するときには第75レンジャー連隊と組み合わせて使う場合があります。

富士総合火力演習で降下する陸上自衛隊の第一空挺団。(写真=沼田理)

――水中から潜入する作戦とのお話でしたが、日本にはアメリカのような潜水艦による特殊部隊支援設備がありません。どのようにして潜入するのでしょうか?

 山下 作戦によりいろいろな手段を使うでしょう。たとえば漁船などを使って接近し、潜水具を付けて近寄ることはできます。映画だったら、海上自衛隊の潜水艦に乗艦して接近、レーダーにひっかからない高速艇で潜入、というほうが絵になるでしょうけれど。