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訓練だけでは士気が落ちる

――特殊作戦群を運用していく上で、どのような問題がありますか?

 山下 一つには士気の維持ですね。訓練だけをやらせておくということは、試合のないボクサーといっしょで、メンタルが保てなくなるのです。諸外国では適宜、実際の作戦に投入して経験を積ませることが行われていますが、専守防衛の日本ではそういうことはむずかしいと思います。

 だからこの『オペレーション雷撃』では、フィクションという形であれ、特殊作戦群について取り上げ、日本にもこういう精鋭部隊があると紹介することで、いくらかなりとも彼らの士気向上に寄与できればと思っています。

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著者の山下裕貴氏 ©文藝春秋/今井知佑

――『オペレーション雷撃』では、他国の軍隊がその素性を隠し、日本国内のテロ組織を装って攻撃をしかけてくる。こうした場合、外部からの攻撃かどうかの判定がむずかしく、防衛出動の要件を満たせない可能性があり、結果、自衛隊の行動には大きな制限が課せられる。はじめに検討されるのは、警察力の出動だろうが、それでは対応しきれない事態も十分に考えられる。

 もちろんこの『オペレーション雷撃』はフィクションだが、もし現実にこのような事態が起こったら、事態解決の主役となるのは特殊作戦群のような少数精鋭のエキスパートチームなのかもしれない。

(構成・井出 倫)

オペレーション雷撃

裕貴, 山下

文藝春秋

2020年11月19日 発売

【内容紹介】
『オペレーション雷撃』

文藝春秋刊 四六判並製 320ページ/定価(本体1800円+税)

日本最西端の島に漂着した一隻の潜水艇。孤島に強行着陸した「琉球独立団」を名乗る謎の武装組織。彼らが狙うのは、そう、〈あの島〉――。
国防最前線を知り尽くした自衛隊元陸将、衝撃の小説デビュー作!
2つの軍事作戦をめぐり、台湾海峡に緊張をはらむ中、米中、そして日本の暗闘が始まる。迫真の諜報・特殊作戦スペクタクルロマン。

 

【著者略歴】

山下裕貴(やました・ひろたか)

1956年、宮崎県生まれ。1979年、陸上自衛隊入隊。

自衛隊沖縄地方協力本部長、東部方面総監部幕僚長、第三師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などの要職を歴任。特殊作戦群の創設にも関わる。

2015年、陸将で退官。

現在、千葉科学大学及び日本文理大学客員教授。