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 カトウさんはそれを聞いて幽霊を挑発してみた。

「おいこら幽霊! おるんやったらなんか言うてみいや!」

 すると、すぐさまカトウさんの携帯電話に着信が入った。時間は真夜中である。2人で顔を見合わせ、おそるおそる携帯電話の番号通知画面を見ると“通知不可能”と表示されていた。タイミング的に怖すぎて、カトウさんはその着信に出る勇気はなかった。

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恐怖の留守電を聞いてみると……

 後日、この話をコンビの相方であるチャドさんに報告した。するとチャドさんは「うちの親父の可能性ない?」と言った。

 チャドさんはオーストラリア出身の留学生芸人である。その故郷のオーストラリアから電話が掛かってくると“通知不可能”と表示されるようだ。カトウさんは「なんで真夜中にお前の親父さんから息子の相方に電話が掛かってくるねんな」と聞くと、チャドさんは「時差があるからね」と言った。しかし、オーストラリアと日本は1時間しか時差はない。

こちらも最初に住んだ事故物件。夜は部屋の中に布団を敷いて眠る

 カトウさんが改めて携帯の履歴を確認したところ、その時の留守番電話が残されていたことに気づいた。そこで、勇気を出してチャドさんと2人で留守電の録音を聞いてみた。

「○×△※□……」

 電話の向こうでは、英語でもなく日本語でもなく中国語でもない、聞いた事もない言語でお経のように誰かが何かを喋っていた。チャドさんは「うちの親父がベロベロに酔っ払っとったんとちゃうかな」と、不安になるカトウさんを和ませようとしたが、そもそもチャドさんのお父さんがカトウさんの番号を知っているわけがないのである。

消したはずの写真が勝手に“復活”

 その後もカトウさんの彼女は「まだ幽霊がいる」とひっきりなしに言っていた。カトウさんは当時ネットなどに載っていた「合わせ鏡にして写真を撮ると心霊写真が撮れやすい」という情報を参考にし、部屋の中で合わせ鏡をして写真に撮った。しかしそこには幽霊らしきものは何も写っていなかった。

「ほら、何も写ってないやん。幽霊はおらへんから大丈夫やって」

 そう言って彼女の心を落ち着かせ、撮った写真はその日のうちに削除した。

 しかし次の日、フォルダを確認すると、消したはずの写真が何枚か残っていた。おかしい、全部消したはずなのに、そう疑問を抱きながらも残っていた写真を見てみると、鏡の中には何もないのに、鏡の外からこちらを覗く男の顔が写っていた。青白い、ムンクの「叫び」のような顔をしていた。カトウさんはその写真をすぐに消した。