予告や前触れもなくいきなり襲われ
承諾の有無については、4つの類型にわけて判断した。
3人目までのAさん(当時21)とBさん(当時15)、Cさん(当時20)については、当初は、白石被告に自殺を手伝ってもらうか、一緒に首吊り自殺をしてもらうために連絡を取っていた。しかし、Aさんにしてみれば、同居生活を送ろうとしていた相手、Bさんにしてみれば一時的に養ってくれる相手、Cさんにしてみれば新たな仕事を紹介してくれる相手である白石被告から、予告や前触れもなくいきなり襲われ、そのまま失神させられるなどして殺害された。3人は殺害されることを想定していなかった、とした。
また、4人目のDさん(当時19)、7人目のGさん(当時17)、8人目のHさん(当時25)、9人目のIさん(当時23)については、どの程度の希死念慮かは不明だが、4人とも、白石被告との間で首吊りの方法で死ぬなどのやりとりをした上で、白石被告宅に来た。しかし、自ら命を絶つ行為の重大性に照らして、タイミングは自分自身が最終的に決定することを予定しているはずで、死亡の仕方は、自ら首を吊るか、白石被告に首を吊ってもらうかのいずれかであり、「なるべく苦しまない方法によって死亡したい希望を有していた」と推認できるとした。
「恐怖心等をともなう方法で失神させ」
5人目のEさん(当時26)については、白石被告と一緒に首吊りで自殺をするというやりとりをし、合流した当初は「私が寝たら殺してください」と告げていた。ただ、白石被告宅につくと、Eさんは頻繁に部屋を出入りし、長時間、元夫と連絡をしていた。そのため、白石被告は、このままでは帰ってしまうのではないかと感じた。Eさんは、いまだ命を絶つ決意を固めることができていなかったと見るのが合理的で、いきなり白石被告に襲われて殺害された。承諾をしていたとは判断できない、とした。
6人目のFさん(当時17)は、「首吊り士と一緒に死ぬために神奈川に行く」などと友人に告げ、首を吊って殺害をしてもらうつもりだったことも否定できない。その中でも、想定していた死亡の仕方は、決意した時点で自ら首を吊るか、白石被告に首を吊ってもらうか。しかし、実際の殺害方法は、就寝中に手足を緊縛した上で、目を覚ましたあとにも、意思確認のないまま、身動きができない状態にし、ロープを引っ張って頚部を締め付けるという恐怖心等をともなう方法で失神させ、強制性交までした上で殺害するという、明らかに想定とはかけ離れていた行為として、承諾を認めなかった。