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 また、犯行態様としては、「狡猾、巧妙で卑劣というほかなく、生命侵害等の危険性が高い犯行」として位置付け、次のように認定した。

「白石被告は、SNS上で自殺願望を表明するなど悩みを抱え、精神的に弱っていそうな女性を狙い、自分にも自殺願望があるかのように装うなどして言葉巧みに被害者らをだまして被告人方へ誘い込み、悩みを聞くふりをするとともに、酒や薬を勧めて抵抗しにくい状態に陥れた後、突如襲い掛かり、手や腕で頚部を絞め付けるなどして失神させた後、女性被害者に対しては強制性交もした上でロープで首を吊って殺害している」

9人が殺害された座間市内のアパート ©渋井哲也

「首吊りのためにあえてロフト付きの部屋を借りた」

 殺害方法や遺体の解体方法について調べるなど、計画的だったともした。

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「被告人は、一連の犯行に先立ち、殺害方法や死体の解体方法を調べたり、首吊りのためにあえてロフト付きの部屋を借りたり、首吊りや死体の解体等の際に必要な遣具をそろえたりするなどの準備行為をしているほか、当初の3名の被害者に対しては、被告人との接点を目立たなくするために、殺害する前に失踪を装わせるなどの発覚防止策も講じた上で犯行に及んでいる。殺害後には、犯行の隠ぺいを図って遺体の解体等の行為にも及んでいる」

 犯行動機としては「金銭等を得る目的や、性欲を満たす目的、あるいは、口封じ目的の犯行と認められ、いずれも専ら自己の欲望の充足あるいは自己の都合のみを目的とした身勝手な犯行」と断じた。

 その上で、「被害者らがSNS上に自殺願望を表明するなどしていた未成年者を含む若年者であったこともあり、SNSの利用が当たり前となっている社会に大きな衝撃や不安感を与えたといえ、社会的な影響も非常に大きい」などとして、死刑を言い渡した。

事件現場 ©文藝春秋

「被害者9人全員が必死で抵抗をしていた」などと供述

 最大の争点は、白石被告が、被害者9人の承諾に基づいて殺害したかどうかだった。

 被害者の抵抗状況のみで承諾がなかったとする検察側の主張について、たしかに、白石被告は、「首を絞めたときに被害者9人全員が必死で抵抗をしていた」などと供述している。しかし、AさんとBさんが首を絞めている手をどかそうとしたと話したことを除くと、被害者によっては抵抗状況に関するはっきりとした記憶が残っていないとも認めている。そのため、「抵抗状況のみをもって被害者が白石被告に殺害されること等について承諾していなかったと認定することは相当ではない」とした。

 白石被告の供述の信用性については、弁護側は「記憶にある内容を語っていない部分が多いし、犯行態様や被害者の抵抗状況などの重要な点について変遷が見られる」などと主張する。しかし、判決では、「意図的に自己の記憶に反する供述をしている様子はない」などとして、弁護側の主張を退けた。