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どこで二次感染が起こっているのか

 それで、押谷先生は、二次感染が起きやすい場所で、「セミ・スーパー・スプレディング・イベント」といっていいようなものが起きているのではないかと考えていました。「スーパー・スプレディング・イベント」というのは、SARSでも見られたものですが、ある特定の環境で特定の人が、他の人と比べて著しく多い二次感染者を生み出すことをいいます。COVID―19でも、SARSほどではなくても、そんなことが起きているのではないか、というのが押谷先生の見立てでした。

押谷仁氏 ©️AFLO

 そこで、二次感染が起こりやすい特徴がどこかにありそうだから、その周囲をつぶしていくのを最優先してはどうかと提案していましたし、鈴木基先生に疫学的な実際のデータではどんな広がり方になっているのかとか、僕にはこういうものをモデル化することは可能かということを聞かれていて、それが2月17日の時点です。

 その問いに対し、僕も返事を出しています。「僕も全く同じことをここ数日考えていました。どうも1人が生み出す二次感染者数のばらつきが大きそうで、それはSARSほどでないにしても、extinction(絶滅)しやすいのではないか。制御する側にとって有利に働く特徴ではないか」と。

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 絶滅しやすいというのは、消えやすいということで、朗報です。この時点では、中国での流行が収束局面で、武漢のような状態になる前に上海や広東省ではかなり封じ込めに成功していたことから、このような性質を仮定しないと説明できないと考えていました。

 だから「クラスター化したところだけ追いながら、中国からの(感染者の)輸出が止まるまで持ちこたえれば、日本での大規模流行を起こさないで済む可能性が高い」と思っていたのです。すぐに中国以外でも増え、新たにそこから入ってくるとは、当時は思っていませんから。

シンガポールや香港のデータから見えてきたこと

 僕がその時までに入手していた、シンガポールや香港のクラスターのデータも送っていますね。これは、研究者間で共有していた非公表データで、シンガポールや香港でも、一部の人だけが二次感染を起こして、そのほかの人たちはほとんど二次感染を起こさないというような図になっています。特定の人だけが二次感染を起こす構造があるということが、当時ある程度オープンになっていたデータや、研究者間で共有していたデータからも明らかでした。