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新型コロナウイルスに揺れた2020年…クラスター対策班はどうして3日で“3密”にたどり着けたのか

――いま振り返る新型コロナウイルス感染第一波 #1

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明らかにされた新型コロナウイルスの「急所」

 既知の感染症の場合、季節性のインフルエンザはどちらかというと前者に近く、SARSは後者に近かった。SARSは、ほとんどの感染者が二次感染させなかったけれど、ごく一部にスーパー・スプレディング・イベント(いわば「超拡散イベント」)を起こす感染者がおり、そのために広がった。そして、COVID-19もSARSに近いのではないかというのが、この時点での押谷や西浦の読みだったのである。

2002年から2003年に流行したSARS(写真は2003年4月の北京) ©️AFLO

 これは世界でも同様だった。押谷らとメールで議論した翌18日、ジョンズ・ホプキンス大学のチームが発表した2月15日付の論文に気づいた西浦は、Facebookを通じて友人たち(医療関係者、公衆衛生関係者が多い)にこんなメッセージを発している。

〈衝撃的研究。パンデミックは起こらない可能性が高い蓋然性をモデルから突き付けてもらった。……この流行が開始して1ヵ月半、世界中の全ての名だたるモデラーが反応して、

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 Dispersion(二次感染者数の分散の大きさのこと)が推定できるようになった瞬間にこれを出してもらえた。中国での Extinction(流行が終息すること)近くまで持ちこたえれば封じ込めができなくないかも知れない。やれるところまで持ちこたえるべきだと再認識させられるものだった。すげーぞ。ウチらもやるぞ。〉

 しかし、残念ながら実際にはパンデミックが起きた。「したたか」とよく評されるこの新興ウイルスは、決して与くみし易い相手ではなかった。それでも、セミ・スーパー・スプレディング・イベントを中心にして広がる流行の様式は、間違いなく急所であり、その後、日本の感染制御は、この性質を積極的に利用した方法を試みることになる。

理論疫学者・西浦博の挑戦-新型コロナからいのちを守れ! (単行本)

西浦 博 ,川端 裕人 ,川端 裕人

中央公論新社

2020年12月8日 発売

 

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