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 クラスターを防いでいけば大規模流行しないで済むぞということなんですが、これに闇雲に立ち向かうと、実地で追跡をする感染研の鈴木先生のところや保健所のキャパシティを超えてつぶれてしまうので、知恵を出し合ってなにか方策を考えましょうという話をしています。1人当たりが生み出す二次感染者の共通項をかき集めて検討するとか、あるいは一体誰がスーパースプレッダーになるか、それは、生物学的な要因なのか、単に接触が多いのか、あるいは環境なのか、2月17日の時点でも、かなり立ち入った話し合いをしていました。

2020年2月の香港。データから一部の人だけが二次感染を起こしていることが明らかに ©️AFLO

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 以下、川端裕人氏による補足コラムから引用しよう。

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数値の裏にある感染拡大の「パターン」

 この議論は非常に大切なことなので、あらためて確認しておく。

 新型コロナウイルス感染症の流行をめぐる報道で、にわかに有名になった再生産数Rという概念がある。これは1人の感染者が、何人の二次感染者を生むか平均を取った数字で、特に「免疫がない集団に最初の1人の感染者が入ってきた場合」のものは基本再生産数(R0)として、その病原体の感染力をあらわす指標として使われる。

 R0が1よりも小さい感染症は、1人の感染者が平均して1人未満の二次感染者しか生まないのだから流行せずに消える。しかし、1を超えると、ねずみ算式に増えていって流行する可能性がある。そこで、感染制御の立場からは、さまざまな介入によって、実効再生産数(Rt)を下げて1よりも小さくするのが目標ということになる。

西浦博氏が当時を語った『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』(聞き手:川端裕人、中央公論新社刊)

 ところで、Rが同じだったとしても、その伝播の際の挙動が同じとは限らない。たとえば、Rが2の時、感染者一人ひとりが、きちんきちんと2人ずつ二次感染をさせるなら、それに対する対策は、全体的に効果があるもの、たとえば、手洗いの励行やマスクをつけるなどの行動面での変容や、もっと極端な場合は、休校や出勤停止などでみんなが自宅から出ないような要請をする、といったことが中心になる。

 一方で、ほとんどの人は感染させないのに、一部の人がたくさん感染させるために平均としてのRを押し上げている場合(1人が生み出す二次感染者数の分散が大きい、という)は、たくさんの二次感染者を生む人、場所、行動などを特定してその部分を制御できれば、その特定の部分だけを抑えることでもRをぐっと下げられる可能性がある。そして、対策した後のRが1よりも小さくなれば流行を防ぐことができるだろう。