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「なんなんだこれは?」素人夫婦が独学と自力で作った巨大要塞“沢田マンション”を探訪してみると…

2020/12/21

genre : エンタメ, 社会,

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 この記事を読んでいるあなたは、「沢田マンション」をご存知だろうか。建築や珍しい場所の愛好家の間では言わずと知れた有名な建築物であり、あとにも先にも地球上に同じ規模のものが現れることはない建物の一つだ。

 簡単に説明すると沢田マンションとは「素人の夫婦が独学と自力で作った巨大なマンション」である。「ふたりだけでどこまでやれるのか、人間の力を試してみたい」「10階建て、100所帯あるマンションを作ろう」と1971年から建設が開始され、増築に増築を重ねた外観から「日本の九龍城」と呼ばれている。

 私が沢田マンションの存在を知ったのは、とある雑誌を読んでいたときのこと。見た瞬間、頭をガツンと殴られたような衝撃と、いくら悩んでも解決しない疑問に見舞われた。

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沢田マンション外観 ©あさみん

「なんなんだこれは?」

 横に長い真っ白なマンション、ウネウネと曲がったり複雑に交差したりする通路、そして、その間から生えている鬱蒼とした植物が続けざまに目に飛び込んだ。

「どこが入口? どこが部屋? なにがどうしてどうなってるの?」

 見れば見るほど疑問は増え続け、「これはなんとしても実物をこの目で見てみたい!」という気持ちが募っていった。

意外な場所にあった沢田マンション

 早速、高知県高知市にある沢田マンションを訪れることにした。

©iStock.com

 初めての高知、高知龍馬空港からレンタカーを借りて、桂浜や龍河洞、ひろめ市場など高知の有名観光地を巡り、かつおのたたきを食べ、サンゴを買う。アンパンマン列車にも乗り、巨大なアーケード商店街や、有名なはりまや橋も見ておきたい。そんな1泊2日のプランの経由地に沢田マンションを組み込んだのだ。

 沢田マンションは高知市の中心部からおよそ3キロ。JR土讃線で高知駅の隣駅である、薊野(あぞうの)駅からは徒歩10分ほどで到着する。

 事前に見てきた沢田マンションの写真はどれも南側から撮影されており、背景にはすべて裏手にある山が写っているため、田んぼや畑が広がっているのどかな場所にあるのだろうと勝手に想像していたが、意外にもアクセスは良い。

©iStock.com

 高知市の中心部から路面電車と並走する片側2車線の広い道路を進む。まだまだ大きな商業施設が並ぶ街並みを10分ほど走っていると、早くも「目的地に到着しました」というアナウンスが。

 カーナビに導かれたその場所は田んぼや畑どころか、回転寿司店、銀行、スーパーマーケット、有名カフェチェーン、そして巨大な家電量販店が密集するショッピングエリアの隣だった。