いつもならば、帰省や旅行に出かけて日常から離れた時間を過ごす人の多い年末年始。ところが、今年はコロナのせいでそうもいかない。普段は行かないような土地に行って絶景を眺めて……などといった体験はしばらくお預け、ということになりそうだ。

 ならば、いつも乗っている通勤電車でも楽しみを見出したほうがいいに決まっている。どうせ毎日の通勤、窓の外を眺めることもなくなってスマホや文庫本に目を落とす。どんなところを通っているのか、途中にどんな駅があるのかもよくわからないままに自宅と勤め先の最寄駅の往復だけ……。毎日のことだから仕方はないがそれでは少しツマラナイ。いつもの通勤電車もちょっと違う意識で乗るだけで、新しい楽しみを得られるかもしれないのである。

通勤電車からみえる景色、意外と見逃してしまうことも…

 などと大層な前置きをしたが、今回の舞台は近畿地方。大阪と奈良を結んで走る近鉄奈良線である。

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 近鉄奈良線は大阪府の布施駅から奈良県の近鉄奈良駅まで26.7kmの路線だ。すべての電車が近鉄難波線の大阪難波駅まで直通しているので、一般的には大阪難波~近鉄奈良間が近鉄奈良線と呼ばれることが多い。このあたりの詳しいところは一般のお客にとっては何の関わりもないからどうでもいいといえばどうでもいい。さっそく、大阪難波駅から乗ってみることにしよう。

今回の路線図。大阪から奈良までぬけていく「近鉄奈良線」

さすがの「聖地」 駅舎の正面に“ラグビーボール”が! 

 といっても、大阪難波駅からしばらくは地下を走る。地上に出るのは大阪上本町駅を出たあたりからで、高架に駆け上って焼肉かおる鶴橋の駅。大阪環状線との乗り換え客を飲み込んで、まっすぐ大阪平野の西に向かって走ってゆく。鶴橋あたりまでは繁華街やビジネス街の中を通っているが、ここから先は少しずつ住宅地。小さな町工場が有名な東大阪市内を通っていくと、東花園駅につく。

 東花園駅は、ご存知ラグビーの聖地・花園ラグビー場の最寄り駅である。2019年、あの1年前のラグビーワールドカップの会場にもなって、その時は大層な盛り上がりだった(と思う)。駅舎の正面にもラグビーボールがあしらわれ、いかにも“ラグビーの聖地の駅”だ。