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共演者への求愛、ネタにマジギレ、借金1000万円…それでも「クズ芸人」が人気を集める“明確”な理由

2021/01/09
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「そこには絶望しか入ってない!」とは、12人以上の愛人を作ったクズ芸人で知られる2丁拳銃の小堀裕之の妻・真弓さんの名言である。小堀は自著『ヘドロパパのヨメイゲン: クズ夫に放つ嫁の名言&迷言』のなかで、真弓さんが小堀のカバンの中身のことを指して、子どもたちにそう言い放ったと記述している。

『ヘドロパパのヨメイゲン: クズ夫に放つ嫁の名言&迷言』(小学館)

 恋愛のトラブル、ルーズな金銭感覚、テレビやSNSでの発言など、ダメさがクローズアップされ、周りに呆れられ、時には炎上を巻き起こす。しかし近年、そういったクズ性を売りにした芸人が増え、「クズ芸人」というカテゴリが築かれた。

 世間の反感は買うものの、どこか憎みきれないクズ芸人たち。なぜ彼らは求められるのか。実際の素性がどうであるかは置いておいて、今回は“クズ芸人”について考察する。

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クズ芸人は意外と策略家

 まず挙げたいポイントは、クズ芸人は意外と策略家であるということ。『逃走中』(フジテレビ系)で仲間を裏切って賞金を獲得した際の言動でブーイングをあつめた鈴木拓(ドランクドラゴン)はクズキャラを自認し、うまく印象操作している。

ドランクドラゴンの鈴木拓 ©文藝春秋

 鈴木は自著『クズころがし』で、「自分のハードルは目一杯下げる」と話している。「台詞を覚えることが苦手」という鈴木はNHKの朝ドラの撮影時、監督や脚本家に台詞量を減らしてもらうように交渉。期待値を下げておけば仮に失敗しても「ため息をつかれるだけで済む」とダメージは食い止められ、逆に普通に仕事をしただけで「意外とちゃんとできるじゃないか!」と勝手に株があがるのだという。

クズを打ち出した処世術本も出版している
『クズころがし』(主婦と生活社)

ジャイアンがいいやつに見える理論のよう

 また、『逃走中』で好感度を下げまくった直後、鈴木は別番組でウェイクボードに初挑戦。マイナスイメージだったこともあり、大して頑張っていないのにボードの上に立っただけで「頑張っている」、「ホントは真面目な人」と評価があがったそうだ。

 もともと鈴木は「好感度の高さではメシが食えない」と割り切っているタイプ。自らクズに成り下がっておけば、褒められる基準も低くなる。当たり前のことが当たり前ではなくなり、特別になる。得する機会の方が多いと踏んだわけだ。「劇場版『ドラえもん』ではジャイアンがいいやつに見える理論」のようである。