クズと悪党のギリギリのライン
クロちゃんは、自分の声などの特徴を上手に生かしながらクズ芸人をやっている。自著『クロか、シロか。クロちゃんの流儀』では学生時代、内申点を上げる目的で生徒会長になり、生徒会費でお菓子を爆買いして怒られたと振り返っている。それでも「声が高いから許されてた。かわいい感じだったからかなって♪」と悪びれず、相手の怒りが収まらない場合は「そんなつもりじゃないから」とひたすら言い訳。自分のキャラが周りにどう映っているか客観的に見て、その場を乗り切ってきた。「そこは分かったうえでやってたしんよ♪」と腹黒さは少年時代から健在だったようだ。
あと、高価なものではなくお菓子という部分が可愛げを残していて、小賢しい。クロちゃんを見ていると、クズとは悪党にはなりきれない者たちのことであり、「ダメはダメだけど、でも絶対に許せないほどではない」というギリギリのラインを感じさせる。もちろん、そうじゃなきゃ笑いや芸にはならない。
人間臭いダメさが愛おしくもある
空気階段の鈴木もぐらは、今もっとも勢いのあるクズ芸人だ。家庭を顧みずギャンブルにハマり、積もらせた借金は700万円。一時期は妻子と別居生活を送っていたという。カネのトラブルが相次ぐもぐらは、千鳥がパーソナリティを務める『相席食堂』(朝日放送系)の12月8日放送回で、砂金集めのロケに出発。借金返済を目指して採集に取り組んだ。
ただ、合間の食事時は大したコメントを発さず普通に飯を食べ(千鳥曰く「現場監督の食事みたい」)、店員も芸能人を眼の前にしているとは思えない無感動なリアクションで、もぐらの求心力の低さを見せつけた。さらに、疲弊した表情を浮かべてタバコで本気の一服。テレビ的にアウトな絵面を連発した。採集した砂金の換金額も少額で、もぐらは「北朝鮮の国境から川を挟んで中国に向けて袋投げるバイトがあるって聞いたことがあるので、袋1発投げに行く」と言ってカメラ前から去った。
もぐらは、人気バンド・銀杏BOYZの大ファンとしても知られている。フロントマンの峯田和伸はずっと、ダメなところ、汚いところ、それらすべてが人間的で美しいということを歌い続けてきた。書籍『ドント・トラスト銀杏BOYZ』で、もぐらは、銀杏BOYZ&峯田和伸に向けて「ギターをぶら下げたまま、全世界から嫌われてほしいです。峯田さん、愛してます」と熱いメッセージも寄稿している。もぐらが見せるいかにも人間臭いダメさは、峯田のような赤裸々な生き様への憧れからきているのかもしれない。そう考えると、もぐらに対して何だか妙にエモーショナルな感情が湧いてくる。