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《M-1優勝》「マヂカルラブリーのネタは漫才なのか?」 いま、その質問に答えが出せない理由

今年のM-1の意志は「破壊」だ

2020/12/23

 今年のM-1の意志。

 それは漫才の「破壊」なのだと思った。

 そもそも敗者復活組を除くファイナリストの顔ぶれが、それを物語っていた。M-1の王道は、第1回大会の覇者が中川家であることからも明らかなように、関西系のしゃべくり漫才だ。しかし、今大会、そのカテゴリーに入るのは見取り図の1組だけだった。

優勝したマヂカルラブリー ©M-1グランプリ事務局

 それとは対照的にいつもの大会なら1組、多くても2組程度の一風変わったスタイルのコンビが目白押しだった。その代表格がマヂカルラブリー、おいでやすこが、錦鯉の3組だった。

例年にはない「変わったスタイル」の漫才が増えた

 彼らは、とにかく色が強い。どんな水槽の水も、彼らが色を落とした瞬間に、彼らの色に染まってしまう。

 したがって、どんなに繊細で、巧緻な色の漫才を披露したところで、彼らが前に出ていたら、その色を変えられないし、後でも、彼らの色にかき消されてしまうのではないかと思った。

 昨年、ミルクボーイが史上最高得点を叩き出して優勝したことで、M-1史における関西系のしゃべくり漫才は1つの頂点を極めたと言っていい。

 成長とは、結局のところ、スクラップ・アンド・ビルドだ。

 M-1が今後、さらなる発展を遂げるために、M-1は、いったん破壊されることを望んでいるのではないかと思った。

最終決戦では敗れたが決勝で最高得点を叩き出したおいでやすこが ©M-1グランプリ事務局

マヂカルラブリーの優勝は「革命」

 果たして、結果は、ボケ役がほとんどしゃべらないスタイルのマヂカルラブリーが優勝した。「破壊系」の中でも、最右翼と言っていいコンビだ。

 従来の漫才のメインは、あくまで会話だ。もちろん、表情や動きで笑わせることもあるが、それはあくまで補助のはずだった。ところが、マヂカルラブリーは、その役割が完全に逆転していた。動きがメインで、村上のツッコミが補助なのだ。

 おそらくM-1史上、最大の破壊であり、最大の革命だと言っていいかもしれない。