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石破茂 自民党・元地方創生相
「こんな党利党略みたいな選挙はおかしいだろう。たとえ勝ったとしても国民が政権を信認したとは到底いえない」

『週刊文春』9月28日号

 これまでも安倍首相と政権に対して批判的な発言を繰り返してきた石破茂氏だが、今回の解散についても辛口だ。

石破茂氏 ©文藝春秋

 9月21日、自身の派閥である「水月会」の会合で挨拶に立った石破氏は、「国民に何のための解散か、何を問うのか、明確にする必要がある」と述べた。石破氏は「(多くの国民が)『この解散の意義は何なのか』と思っている」と指摘した上で、「与党の一員として国民に答える責務がある」と強調した(共同通信47NEWS 9月21日)。それ以前に、派閥関係者に語っていたのが冒頭の言葉である。石破氏が用いた「党利党略」という言葉が今回の選挙の目的を端的に表している。

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 安倍首相が解散に踏み切った最大の理由が「政権維持」である。森友・加計問題で自民党と政権の支持率は下がるばかりで、7月の東京都議選では歴史的大敗を喫した。窮地に陥った安倍政権だったが、そこへ蓮舫代表の辞任、山尾志桜里議員の離党など、民進党の“敵失”が重なった。自民党関係者は「民進党のスキャンダルに自民党議員は大ハシャギでした」と語っている(『週刊文春』9月28日号)。

 一方、小池百合子東京都知事の側近らが国政政党を立ち上げる準備も整ったとは言い難い。とある自民党幹部は日本経済新聞の取材に対して、「『小池新党』の態勢が整う前に選挙するという判断もある」と認めた。別の首相側近は「与党が弱っていても野党がもっと弱ければ選挙は勝てる。それが小選挙区制度の戦い方だ」と語ったという(9月18日)。剥き出しの「党利党略」選挙だ。ノンフィクション作家の保阪正康氏は「自民党に有利な状況だからといって解散するのは政党政治とはいえません。安倍首相による政治の私物化に他なりません」と切り捨てた(『週刊文春』9月28日号)。

 なお、「解散は首相の専権事項」とされていることについて、東海大の永山茂樹教授(憲法学)は、「いまなら勝てるだろう、いまなら多数派を維持できるだろうという理由での解散」は憲法学者の間で「認められない、と考えられている」としている(BuzzFeed NEWS 9月21日)。 

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安倍晋三 首相
「必要なのは対話ではない。圧力だ」

AFPBB NEWS 9月21日

 訪米中の安倍晋三首相は20日午後(日本時間21日未明)の国連総会で一般討論演説を行った。演説のほぼ全てを北朝鮮問題に費やす異例の内容で、「脅威はかつてなく重大だ。眼前に差し迫ったものだ」として、国連全加盟国に安全保障理事会の制裁決議を厳格に履行するよう求めた(産経ニュース 9月21日)。

 さらに「対話とは北朝鮮にとって、われわれを欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と批判。北朝鮮との対話は、核・弾道ミサイル計画の放棄が条件となるとした上で、「そのため必要なのは対話ではない。圧力だ」と述べた。安倍首相は米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿でも「北朝鮮に対話を呼び掛けても無駄骨に終わる」と強調していた(日本経済新聞 9月20日)。

会談中に握手する安倍首相とトランプ米大統領=21日、ニューヨーク ©共同通信社

 対話での解決を図ろうとするロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相らとの方針の違いをあらためて鮮明にした形だ。一方、トランプ米大統領とはしっかりと足並みを揃えている。このときの演説でも「全ての選択肢はテーブルの上にある」という米国の立場を「一貫して支持する」と改めて表明した(ブルームバーグ 9月21日)。

 国内では、北朝鮮問題が今回の総選挙で自民党にとって有利に働くという見方が強い。作家・個人投資家の山本一郎氏は今回の解散総選挙を「ミサイル解散」とネーミングしてみせた(文春オンライン 9月21日)。福岡県行橋市の市会議員・小坪慎也氏は自らのブログに「安倍総理の指揮のもと、ミサイル解散でやつら(民進党・共産党)を滅ぼす!」と記している(9月17日)。

 安倍首相が解散を急いだ理由として、首相周辺は「今年末以降、北朝鮮情勢がさらに緊迫する可能性がある」ことを挙げる(日本経済新聞 9月20日)。安倍首相がトランプ米大統領との電話会談で、「北の脅威は来年の方がずっと強まる」との確証を得たという報道もある(『週刊新潮』9月28日号)。一方、デイリーNKジャパンの高英起編集長は、「安倍首相が早期の解散総選挙を決断したのは、米国から『12月以降、北朝鮮を攻撃する』と伝えられたからだ」と与党側がリークを行っていると批判している(Yahoo! 個人ニュース 9月21日)。

 防衛省関係者は「公示日の十月十日は朝鮮労働党の創建記念日ですが、選挙期間中に北朝鮮がミサイルを撃つ可能性は高い。その場合、政府は迎撃命令を出すかどうか判断を迫られる」と解散総選挙で生じる3週間の政治空白を不安視する(『週刊文春』9月28日号)。

 なお、菅義偉官房長官は19日の記者会見で「国民の生命、平和な暮らしを守るための対応策は常に万全だ」と危機管理は問題ないとの認識を示した(日本経済新聞 9月20日)。さすがのガースーとしか言いようがないが、本当にそんなに万全なの? 勝野哲電気事業連合会会長は「(原発にミサイルが撃ち込まれても)放射性物質が大量に放出されない」(テレ朝news 9月15日)と言っていたけど……。