犯した罪を尋ねると、さらりと「空き巣ですわ」
歌丸にはプライドというものがない。前科についても「やっちまったんです、ヘヘヘ」という感じでまるで人ごとのように話す。それは自分の犯した過ちを包み隠さずに人に話すという罪の意識ゆえの行為ではなく、ただ捕まって刑期を終えて出てきたという事実のみを並べ、他に意味を含まない話し方だ。
生活保護に関しても肝臓が悪いから福祉で食べさせてもらえばいい、というような単純な気持ちで、少しでも良くなって社会復帰しようという意志はまるで感じられない。犯した罪を尋ねると、さらりと「空き巣ですわ」と答えた。歌丸には窃盗という罪がとてもお似合いだ。
「また面倒な奴らが来やがった」
そこへ自転車に2人乗りをした男女がやってきた。年齢は40~50くらいだろうか。上下スウェットでサンダルを履いた金髪の女はブクブクと太っており、いかにも不健康そうな風貌だ。いつか裁判傍聴で見た、覚せい剤中毒の女と顔も体型も口調も被るものがあった。
「また面倒な奴らが来やがった」と歌丸の隣にいたシゲがぼそりと呟いた。
「ねえ見て! またしょうもないもの買っちゃったの! ほら、コーチのカバン! これ5万円なのよ」
袋からカバンを取り出し肩にかけてみせた女に対し、どこからか「5万なんてそれは高いものですね」と取ってつけたような声が出る。
「5万円なんて私にとっては5000円みたいなものよ。こんなの高いって言っていたら人間終わりだわ! 今日は8万以上使ったわ!」
なんだろう、私にとっては初めて見る類の人である。あいりんの生活保護受給者たちにブランド品を自慢する……。
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※本書は著者の体験を記したルポルタージュ作品ですが、プライバシー保護の観点から人名・施設名などの一部を仮名にしてあります。
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